【1月26日 AFP】ニナ・ダン(Nina Dang)さんは昨年、自転車事故に遭い、救急車で米サンフランシスコにある公立病院の救急救命室(ER)に搬送された。数か月後、2万243ドル(約222万円)の請求書が届いた。

 1年間にわたり米国の高額医療費問題を調査してきた米ニュースサイト「Vox.com」がダンさんの件を知り、記事にした。この報道は数週間にわたって全米の怒りを呼んだ。Voxの24日の報道によると、病院側は最終的にダンさんへの請求額を200ドル(約2万2000円)に減らすことに同意したという。

 この出来事は、米国の保険制度の複雑さ、公立病院と私立病院や州法と連邦法の複雑な絡み合い、受診した病院が、加入している保険会社と医療機関が作るネットワークの「内」にあるか「外」にあるかで給付額が違う保険の仕組み、バラク・オバマ(Barack Obama)前大統領が医療保険改革法(ACA、通称オバマケア、Obamacare)を成立させたにもかかわらず保険料や保険の適用範囲を一元管理する組織が存在しないことなどを示す好例だ。

 米国では、医療保険に加入したとしても安心が保証されるわけではない。患者は常に自身が加入している保険の適用範囲に照らして、どの治療を受けることができるのか、どの医師にかかることができるのか、どの病院に入院できるのかを把握していなければならない。適用範囲は不完全なことが多いので、患者は最終的な請求額がいくらになるのか推測するほかない状況に置かれている。

 ダンさんの事例では、保険が適用されたのは請求額のほんの一部、総額2万4000ドル(約263万円)のうち約3800ドル(約41万6000円)だけだった。受診した病院が、ダンさんが加入していた保険会社と契約を結んでいなかったためだ。

 ダンさんが受診したのは、交流サイト(SNS)最大手、米フェイスブック(Facebook)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)最高経営責任者(CEO)から7500万ドル(約82億円)の寄付を受けたザッカーバーグ・サンフランシスコ総合病院(Zuckerberg San Francisco General Hospital)だった。

 実際、この病院はすべての保険会社から「ネットワーク外」とみなされているため、大勢の患者が超高額な医療費を請求されている。Voxは同病院の方針について「驚くべきこと」と述べている。

 Voxは読者から投稿された法外な医療費の請求書約2000通に基づきデータベースを構築。それによって、同病院の救急救命室を赤ちゃんが受診し1万8000ドル(約197万円)を請求された事例があることが分かった。

 このほか、ケンタッキー州在住の女性が腹痛を訴えて救急救命室を受診したものの、腹痛は救急に該当しないして保険会社に給付を拒否され、1万2000ドル(約131万円)を請求された事例もあった。

 こうした事態を受けて議員らが腰を上げ、現在の慣行を変えるための法案を複数提案。公聴会の期日を設定した。

 一方、ザッカーバーグ総合病院は、方針変更に関する発表を一切行っておらず、ダンさんの事例のように一部の患者への請求額を調整する以上の対応はしていない。

 Voxで本件を担当するサラ・クリフ(Sarah Kliff)記者はツイッター(Twitter)に、「この患者(ダンさん)の問題が解決したことは素晴らしい! しかし、記者に医療費の調査をさせるようでは、医療保険制度の運営の在り方としてかなりまずい」と投稿した。(c)AFP