■表現しても聞いてくれない

 ラムルム氏によると、改革によって、ドゥアルイシェルのような貧困地区に政治家や研究者、NGOがアクセスできるようになったという。住民が抱える問題を調べ、解決策を実行するという行動を政治家が取っていないことは明らかだが、議論を行う機会はできたとラムルム氏は指摘する。

 だが、ジュベリさんのような若者にとって、それだけでは不十分だ。若者は、経済的苦境以外にも、日常生活を息苦しくさせるような数々の困難に直面している。

 多数の死者を出した2015年の一連のイスラム過激派による襲撃以後、当局は主に35歳未満の男女対象に、親の許可を得ずに特定の国へ渡航することを禁じている。

 高校生のハムザ・ディファリ(Hamza Dhifali)さんは、「私たちは、成熟した市民になるために革命を起こした。だが、私が革命から得たのは表現の自由だけだった」と語り、「(革命)以前は、自分を表現する自由はなかったが、今はできる。それは素晴らしいことだが、誰も耳を傾けてくれない」と続けた。

■沈没する船

 2人の子どもを持つイッサム・エルハリ(Issam Elhali)さん(31)は、何らかの事業を行いたいと希望する若者を支援するための政府の融資制度を利用している。エルハリさんは、「小さな金物店を開くために7000チュニジア・ディナール(約26万円)の融資を受けたが、固定金利が21%にも上り、やっていくのが困難だ」と話す。

「当局は若者を支援していると言うが、実際は私たちを食い物にしている」とエルハリさん。「私たちに未来はない」

 このような状況でも、ドゥアルイシェルの若者たちは、チュニジアの民衆蜂起から8年目を記念して行われるショーの準備に追われている。

「私たちは、それでもまだわずかな望みを持ち続けている珍しい少数派だ。他の若者たちは失望し、カフェに入り浸って時間をつぶしている」とエルハリさんは話す。

 エルハリさんはまた、国内の政治家や最近になって首相と大統領の間で持ち上がった政治紛争に対しても、厳しい目を向ける。

「私たちは、沈没しようとしているのに船長2人が口論を止めない船に乗っているようなものだ」とエルハリさんは言う。「船から脱出して生き延びたい」、新しい人生を築きたいと訴える。(c)AFP/Caroline Nelly Perrot