■生物学的に荒廃する危険

 ここに壁が建設されると「甚大な被害がもたらされる」と、同センターはウェブサイトで訴えている。センターによれば、周辺一帯の全長50キロに及ぶ壁の建設は、2月後半には始まる可能性がある。

 同センターのトレビノ・ライト(Trevino Wright)氏は、壁および壁に取り付けられる照明具のこうこうとした光で、あらゆる動植物の夜間活動が妨げられ、「今は活発でも絶滅の危機にある生態系が、生物学的に荒廃してしまう」可能性があると指摘する。

「チョウならば壁を飛び越えることも、(フェンスの)間を抜けることも、迂回(うかい)することもできるだろうと言う人もいるが、そうとは限らない」とゲラ氏。「チョウの中には地面すれすれの高さを飛ぶ種もいる。そういったチョウには、高さ5メートルもあるコンクリートの壁は越えられない」

 さらに、「国境の壁を建設するためにブルドーザーが入ると、私たちがここで保護しているチョウの寄主植物である草木がなぎ倒されてしまう」。周辺の木々は、特に春になると、さまざまな鳥にもすみかを提供している。また建設車両によって一部の哺乳類の生息環境も破壊される危険性があると、ゲラ氏は訴える。

 センターは連邦政府を相手取り、私有財産権の侵害だとして訴えを起こしている。トランプ大統領は国境をめぐる危機を誇張していると思う、とゲラ氏はいら立ちを表し、「危機が本当にあるなら、私はここに住んでいない」と事もなげに語った。

 ゲラ氏は長年、共和党を支持してきたが、2020年の大統領選ではトランプ氏には投票しないと明言した。

「私たちは、自由に通行できる国境に賛成しているわけではないし、移民法は強化すべきだとも思っている。だが(不法移民を取り締まるためには)壁以外の方法だってある」とゲラ氏はAFPに語った。「壁なんて、時代遅れだ」 (c)AFP/Inès BEL AIBA