【1月18日 AFP】明るいライトの中で何列にも並び、光り輝く各自動車メーカーの最新モデル。だが、業界関係者や記者らを出迎えるはずの出展者たちは、視線を落としてスマートフォンばかり見ている。

 米ミシガン州デトロイト(Detroit)で開催中の北米国際自動車ショー(North American International Auto Show)。彼らは来場者がまばらな展示会場で、ソーシャルメディアのチェックなどをしながら時間をつぶしているのだ。

 かつてはスポーツカーやドイツ製の高級車で埋め尽くされていた展示会場には、カフェスタンドや期間限定のレストランがひしめいている。米国で最も重要なモーターショーだった同展示会の参加を見送る自動車メーカーが今年は相次いだため、主催者側が空いたスペースを有効活用するために思い付いた苦肉の策だ。

 デトロイトのコボ・センター(Cobo Center)で今週開催されている同モーターショーが1月に行われるのは、今回が最後となる。来年からはデトロイトの冬のいてつく寒さを避けて、6月に開催される予定だ。

 過渡期に開催された今回のモーターショーは、これまでよりも報道陣や業界関係者の参加が減り、新車の発表も少なかった。

■静まり返った会場…ゴーン氏、マルキオンネ氏の不在

 特に際立っているのは、自動車メーカー大手の不在だ。メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)やBMW、ジャガー(Jaguar)、ランドローバー(Land Rover)、ボルボ(Volvo)、アウディ(Audi)、ランボルギーニ(Lamborghini)、フェラーリ(Ferrari)、ロールスロイス(Rolls Royce)などは今回、参加していない。

 広大な展示会場は、通常では考えられない面積を軽食スタンドやフードブース、テーブルや椅子などが占めている。だが、前菜やシャンパンの入ったグラスなどは手つかずのまま置かれている。以前は、展示車の中以外は座る場所を見つけるのも困難で、会場内で食べ物を手に入れることなど論外だった。

 さらにメディアルームでひときわ強く感じられたのは、2人の人物の不在だ。1人は昨年死去した、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(Fiat Chrysler Automobiles)のセルジオ・マルキオンネ(Sergio Marchionne)前最高経営責任者(CEO)。もう1人は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などの罪で日本で起訴され、勾留されている仏自動車大手ルノー(Renault)のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)会長兼最高経営責任者(CEO)だ。

 大きな野心を秘めていた業界トップのこの2人なら、今回のショーの雰囲気や人々の話題を一瞬にして変えることができただろうにと思えた。