【2月5日 CNS】中国・上海交通大学(Shanghai Jiao Tong UniversitySJTU)人工知能研究院は、上海市衛生健康発展研究センターと上海交通大学医学院と連名で、初めてとなる「人工知能(AI)医療白書」を発表した。

 同書の構成は、AI医療の発展史、政策分析、業界の現状、問題の所在と趨勢分析の4大部分に分かれている。

 編集チームの責任者であるSJTU・AI研究院の金耀輝(Jin Yaohui)教授は、世界各国のAI政策の分析を通してわかることは、コンピュータ囲碁プログラムの「AlphaGo」が韓国の囲碁棋士・李世ドル(イ・セドル、Lee Se-Dol)氏に勝った事件をきっかけとし、人工知能(AI)は2016年下期から、各国政府や各界から注目されるようになったと説明する。世界各国は、次々とAIを国家戦略のレベルに引き上げ布石をするようになり、特に医療の分野でのAI利用を重要視するようになったという。

 データを見ると、2018年12月末の時点で、中国の31の省・市のうち、19の省・市がAI計画を発表している。このうち、16の省・市は2020年の核心産業の規模が4000億元(約6兆4200億円)に達することを目標とし、国家計画の目標だった1500億元(約2兆4000億円)を遥かに上回った。産業規模の目標のトップ5は上から順に、上海市、北京市、浙江省(Zhejiang)、広東省(Guangdong)と四川省(Sichuan)だった。

 同チームは、AIの医療領域での応用状況を分析し、医療画像解析、補助診断、薬物研究開発、健康管理、疾病予測の5つの応用分野を抽出した。今後、外国では薬物研究開発がAIのメインとなり、中国では医療映像のビッグデータと画像解析技術の優位性により、AI医療用画像解析がメインとなると分析している。

 AI関連の非上場企業100社の2018年の売り上げ規模を見ると、「100強」のうちの10社がAI医療関連企業で、この10社のうち6社が画像解析関連だ。最も多くの融資を受けた分野は画像解析で、2018年第3四半期の時点で、中国のAI画像解析の業界が公表した融資案件は20件近くあり、融資総額は26億元(約417億円)だったという。

 中国のAI画像解析の具体的なビジネスを見ると、現在の画像解析の製品は、主として疾病のスクリーニング検査に応用され、腫瘍と慢性疾患が対象だ。2018年の売り上げが特に多かったAI医用画像解析企業の応用シーンとデータ資源を分析すると、大部分の企業は病院側と広範で緊密な提携を行うことで、肉芽腫性疾患、眼底、乳がん、子宮頸がんなどで実用的な成熟した製品が出てきているという。

 留意すべきことは、AIは一定の範囲で医師の仕事を軽減し、医師の診断の正確さを高めることができるが、医療機関としては必ずしも必須のものではなく、費用負担のあり方や応用シーンなどの問題は今なお多くの討論が必要だ。(c)CNS/JCM/AFPBB News