■ヒップホップミュージシャンの出演番組が共産党の倫理に「抵触」

 中国メディアが全国ダンス協会のデータとして伝えたところによると、国内にはストリートダンス用のスタジオが5000か所以上ある。

 タトゥーや化粧でさえ政治的に一種のタブー、あるいは不適切と見なされることもある中国では、社会の問題を訴え、現状への不満を吐き出すためにラップやグラフィティアートなどを含むストリートカルチャーが利用されることも多い。だが、実際にそのチャンスがあるかというと、それはまた別の話だ。

 昨年、中国のラップオーディション番組「ラップ・オブ・チャイナ(Rap of China)」で注目を浴びたラップミュージシャンたちが、露骨な歌詞やタトゥーをめぐり激しい批判にさらされた。昨年1月半ばには、「タトゥーを入れたヒップホップミュージシャン」が出演し、内容的にも中国共産党の倫理に「抵触」する番組の放送を政府が禁じていたことも明らかになった。

 中国で有名なストリートダンサーのジャン・ジェンポン(Zhang Jianpeng)さんは、テレビ放送されるダンス大会でステージに上がる前、メークを落とすよう強要されたと語った。

「テレビ番組では、タトゥーを見せてはいけない」し、「男性は、女性のような服装をしてはいけない」のだと話すジャンさん。自身のダンススタジオ「T.I.スタジオ(T.I. Studio)」のロビーには、レインボーカラーの大きな旗が掲げられており、LGBT(性的少数者)に対してフレンドリーな場を提供していることを堂々と公表している。

 ストリートカルチャーは日々「ものすごく受け入れられ」つつあるが、中国メディアの規制当局は別だ、と話すジャンさん。一番良いのは人目を引くような大会に出場するのを避けること、そうした大会では「ありのままの自分ではいられない」からだ、と言い添えた。

 中国のストリートダンス界に身を置く他の人々も同意見だった。

 国内で15年以上ブレークダンスをやってきたリエン・ジューロン(Lian Jiulong)さんは、「ステージの上に立っていない限り、私たちには発言の自由がある」と語った。映像は2018年10月撮影。(c)AFP/Eva XIAO