【1月7日 AFP】(更新、写真追加)タイの首都バンコクの空港で6日、18歳のサウジアラビア人女性が入国を拒否され、身柄を拘束された。女性はサウジへ送還されれば殺されると訴え、亡命を求めているが、タイ当局は7日中に女性を本国に送還するとしている。

 サウジアラビアに対しては、ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏がトルコのサウジ総領事館で殺害された衝撃的な事件の捜査と対応をめぐって厳しい目が向けられ、国内の人権状況にも改めて批判が集まっている。

 タイで身柄拘束されたラハフ・ムハンマド・クヌン(Rahaf Mohammed al-Qunun)さんは、AFPの取材に対し、家族から身体的・精神的な虐待を受けており、家族旅行でクウェートを訪問中に逃げ出してきたと語った。

 クヌンさんはオーストラリアで亡命を申請する予定だったが、乗り継ぎで経由したバンコクのスワンナプーム(Suvarnabhumi)空港で降機した際にサウジアラビアとクウェートの大使館員に呼び止められ、パスポート(旅券)を強制的に取り上げられたと説明している。後見人の男性が「自分の許可なしに」渡航したクヌンさんを当局に通報したのだという。

「私の家族は厳しく、髪を切っただけで6か月も部屋に閉じ込められた」とクヌンさんは主張。送還されれば投獄されることは確実で、「刑務所から出た途端に殺されるのは目に見えている」と語り、「怖い」「希望を失いつつある」と心境を吐露している。

 タイ入国管理局によると、クヌンさんはクウェート発の便で6日にタイに到着した際に、必要な書類や帰国便のチケット、十分な資金などを所持していないとして入国を拒否された。7日朝現在は「サウジアラビア行きの便のチケットを昨日(6日)自分で購入し」「入管当局者とサウジ大使館員に付き添われて搭乗を待っている」という。タイ入管ではこの件について「家庭内の問題」との見方を示している。

 便の出発時刻が迫る中、クヌンさんはツイッター(Twitter)に、タイ政府や警察当局に送還を中止し、亡命の手続きを進めてくれるよう訴えたことを明かすとともに、空港内の乗り継ぎ待ち制限エリアにいる人々に「私の送還に抗議してください」「私には皆さんが必要です」などと呼び掛けた。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、タイ当局はクヌンさんによる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)への難民申請を許可しなければいけないと主張。フィル・ロバートソン(Phil Robertson)アジア局長代理は、「いったいどんな国が、外交官が空港内の立ち入り禁止区域をうろつくことを許し、乗客の旅券の押収を認めるというのか」と述べ、サウジアラビアでは家庭内で女性が虐待を受けても刑罰の対象にならないと指摘している。

 一方、サウジの駐タイ代理大使は、クヌンさんを連れ戻すための「支援」を求める連絡が父親から大使館側にあったことは認めている。だが国営テレビとのインタビューでは、パスポートの押収や空港に大使館職員らがいたことを否定している。(c)AFP