■党中央から資金

 その結果、拘束者が急増し、各地方政府は大急ぎで対応に追われたようだ。

 センターの建設や運営には多大な費用がかかることから、2017年には自治区全体で司法当局の支出が爆発的に増えている。AFPの試算によれば、当初予算の少なくとも577%増に相当する30億元(約480億円)近くが投じられたもようだ。

 自治区南部の複数の地方政府は、財源不足を、センター向けの特別な資金で補った。予算関係の文書によれば、資金の少なくとも一部は、中国の公安部門を取り仕切る党中央政法委員会から直接支出されている。

■「虎椅子」も発注

 2017年4月ごろには、各地方政府が施設関係のさまざまな入札の公告を始めている。調達品目を見ると、確かに、机や椅子、エアコン、2段ベッド、食器といった、中国の一般的な大学の備品として違和感がないものもある。

 だが、それだけではない。高度な監視システム、「研修生」の室内の様子を記録するためのカメラ、有刺鉄線、電話盗聴器、赤外線監視装置など、刑務所で使われるような機材も含まれているのだ。

 センターはほかにも、警察の制服、暴動対応用の盾やヘルメット、催涙スプレー、催涙ガス、網を発射するネットガン、スタンガン、電気棒、警棒、やり、手錠、狼牙棒などを購入している。

 さらに、少なくとも1カ所のセンターは、中国の警察が尋問対象者の身体拘束に用いる器具、通称「虎椅子」も注文していた。

 自治区の区都ウルムチ(Urumqi)の党機関は、センター向けにテーザー銃の調達を緊急に要望する文書の中で、これらの機材は「職員個人の安全を確保する」ために必要だと訴えている。非殺傷武器については「通常の火器を使わなくてもよい状況で、偶発的な事故が起こる可能性を減らす」上で重要だとも指摘している。

■中国外務省「強い疑問」

 AFPは自治区の地方当局に繰り返し取材を試みたが、本記事を公開するまでにコメントを得ることはできなかった。中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官は10月24日の定例記者会見で、本記事が明らかにした事実に疑問を呈する一方、内容を特に否定もしなかった。華報道官はAFP記者に次のように語った。

「あなたが(記事に)書いている状況が真実なのかどうかについては、強い疑問を呈しておきたい」「あなたには、中国当局がどう説明しているか、中国メディアがどう伝えているかを調べてもらいたい」

 ウイグル人らの大量拘束をめぐり、中国に対する制裁を呼び掛けているマルコ・ルビオ(Marco Rubio)米上院議員(共和党、フロリダ州選出)は同日、AFPの報道を受けて、ツイッター(Twitter)で施設に関する中国側の説明に改めて疑念を示した。

「中国は世界に対して、新疆の強制収容所を職業訓練センターだと信じ込ませようとしている。しかし、警棒を2768本、電気棒を550本、手錠を1367個、催涙スプレー2792缶購入する職業訓練センターとは、いったいどんな職業訓練センターなのか?」