■「模倣」文化との闘い

 中国のモノづくりに携わる人々は新しいアイデアを思い付くことに誇りを持っており、周囲からは創案に対するしかるべき対応が得られるべきと考えている。

 これは、中国のいわゆる「山寨(偽物、模倣品)」文化からの脱却だ。同国では、コンピューターからハンドバッグ、有名な絵画に至るまで、ありとあらゆるものの模倣品が作り出されており、その品質も常に上がっている。

 8年前には深センの兄弟2人が、米アップル社製品「iPod Touch」を通話やテキストメッセージの送信など完全機能を備えた「iPhone(アイフォーン)」に変える付属品「Apple Peel」を発明した。

 中国は「山寨」から、「Apple Peel」のようなグレーゾーン、さらには停留場所不要の共有自転車といった独創的なフィールドへとゆっくり進化している。主に外国企業の生産拠点として機能していた深センも、今や中国企業やベンチャー企業が手掛ける携帯電話やドローン、その他機器を生み出す場所に移り変わった。

 だが、米商工会議所(American Chamber of Commerce)が行った米企業を対象にした調査では、知的財産権の侵害が依然として中国において最大の課題となっていることが明らかとなり、法律の不備と訴訟の難しさが指摘された。知的財産権の問題には中国企業も困惑しており、防止策として新たに知的財産権法院(裁判所)が設立されている。

 中国の最新技術の動向を追うオールテックアジア(AllTechAsia)創設者、巫楠(Wu Nan)氏は「中国では、何かがはやりだすと企業が相互にまねし合う。低水準の技術しか必要としないアイデアの場合は特に顕著で、創案者を特定することは難しい」と語った。