■補助金の獲得競争

 専門家ら別の問題も指摘する。政府が投入する潤沢な補助金が、特定の分野においてスタートアップの必要以上の集中を招きかねないことだ。

 北京大学深セン研究生院(Peking University Shenzhen Graduate School)のクリストファー・ボールディング(Christopher Balding)教授(経済学)は、一部の企業家においては、提案した製品を実際に市場に投入するか否かにかかわらず、補助金の有無に基づいてのみ参入を決めている場合もあったと指摘する。

「例えば、ロボットが目玉になると判断されて補助金が多く投入されると、ロボット分野への参入が一気に高まる。国内における新規参入が続く間は、中央政府によって必要以上に補助金が投入される」

 また、中国のモノづくりの現場においては、公的資金が賢明に使われていないとの指摘もある。「(創作目的の)施設は政府から非常に多くの資金を得て、相互に利用者の獲得競争をしているが、施設の数があまりにも多いために利用者が皆無のところもある」と巫氏は語った。

 深センにおけるモノづくりのための民間教育拠点「スチームヘッド(Steamhead)」の創設者、ジェームズ・シンプソン(James Simpson)氏は、こうした「ハコモノ」は十分にあり、今は利用者を集めることが優先だと述べ、「中国では、創造的な技能を持続可能な事業に変えることへの多大な関心があり、そのための資源も増大している。足りないのは新たな経験や、他の人から学ぶための交流の機会だ」と指摘した。

 一方、MGスペースを利用する子やその親たちは、施設に価値を見いだしており、中国の創造的技能に対してより楽観的な立場だ。

 AFPの取材にある2児の母親は、「子どもたちには実用的な技能を身に付けさせたいとの考えを持つ深センの教師らを筆頭に、すべての学校で丸暗記の勉強をさせていた中国も随分進歩した」と述べ、この女性の娘(8)も「作ることが好き」「やりたい仕事はまだ分からないけれど、楽しいことをやりたい」と話した。(c)AFP/Joanna CHIU