■不吉な兆候

 国際社会の目は、同国ラカイン州の危機に向けられてきた。国連(UN)が「民族浄化」と非難する、政府軍の容赦ない武力行為によって、イスラム教徒のロヒンギャ約70万人は隣国バングラデシュに逃れることを余儀なくされた。

 そしてこのほど、ロヒンギャに対する残忍な行為が非難された第33軽歩兵師団(33rd Light Infantry Division)が、カチン州に配備されたのだ。

 カチン州での作戦の規模は、ロヒンギャに対して行われたものより小さいが、部隊の配備そのものが、住民にとっては不吉な兆候となっていると専門家らは指摘する。

 ミャンマー北東部で続くこの衝突は、英国の植民地支配から独立した1948年以降、同国を苦しめ続けてきた20以上の民族紛争の一つ。

 民主化運動の指導者であるアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏は、2年前に同氏が党首を務める政党が政権を握って以後、国全体の平和構築が最優先課題だと述べていた。だが安全保障問題をめぐっては、軍が今も主導権を握っている。

 カチンでの紛争は、17年間の休戦状態を経て、2011年に再開。2016年以降は対立が激化し、カチン州や隣接するシャン(Shan)州北部に住む10万人以上が家を追われた。

 フリーのアナリスト、デービット・マシソン(David Mathieson)氏は、ロヒンギャへの注目を政府軍は利用しながら、「平和交渉のテーブルに」つかせるためにKIAを攻撃したと指摘している。(c)AFP/Richard SARGENT