■支援措置の問題

 ブラジルのジカ熱流行は2015年に始まった。小頭症や他の神経系異常のある新生児の爆発的増加が、とりわけ最貧地域の北東部で発生した。2015年11月から2018年5月の間に、保健省に登録された妊娠中のジカ熱感染に関連する症例は3000件以上を数えた。

 政府はジカ熱にかかった子どものいる母親に対して支援措置を提供している。公営住宅への優先的入居や最貧家庭への最低賃金の支給などだ。だが小頭症の子どもがいる母親らは、情報不足や煩雑な官僚的手続きのために、自治体サービスを利用するうえで困難に直面し、利用を諦めることが多い。

 当初、フェレイラダシルバさんとワラシさんは同じ状況にある他の家族と連絡を取って情報交換を行ったり、当局に交渉して住宅を確保したりするなど、自分たちの権利を守ることに努めた。

 だが家族の生活水準とミゲウ君に提供されている配慮は、規則によるものではない。特にパートナーに捨てられたシングルマザーに対してはそうではないと2人は指摘する。

「ミゲウの存在は私たちの闘いを後押ししてくれる。彼のためだけでなく、全ての家族のために。われわれはこれがどれだけ困難なことか知っているし、多くの家族で父親が不在なことを知っているからだ」とワラシさんは語る。

 逆説的だが、彼らが直面している最大の困難は複雑な医療を受けることではなく、基本的な小児科の手当てを得ることだという。このことについてワラシさんは、「公共の医療においては、医師が(ジカ熱の)先天性症候群について詳しいケースはほぼない。そのため、基本的な小児科の手当てを与えることができない」と語り、「だが、小頭症と診断された幼児にも…例えば歯痛など、より一般的に見られる健康問題はある」と続けた。