【12月28日 AFP】ラモン・マッドーニ(Ramon Maddoni)さんは、オレンジ色のビブスをはためかせ、ドリブルで右に左に相手をかわすやせぎすの少年を指さし、こう口にする。「あの子を見てみなさい。あの子は『怪物』だ」(※この記事は、2018年5月14日に配信されました)

 マッドーニさんは、熱烈なサッカーファンぞろいのアルゼンチン国民を夢中にさせる新しい「怪物」、つまり第二のリオネル・メッシ(Lionel Messi)や、第二のディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)を探す仕事をしている。

 ブエノスアイレス郊外にあるCSパルケ(Club SyD Parque)の施設に夜のとばりが降りるころ、6~12歳の子どもたちが、巧みな足さばきでボールを操りながら、コンクリートのコートで上下動を繰り返す。出入り口には迎えの親たちの姿。その中で、マッドーニさんは子どもたちのプレーに鋭い視線を向ける。

 70年前に創設されたパルケは、近隣の中流から下流の人たちの心であり魂だ。アルゼンチンでは、マラドーナをはじめとする数多くのスター選手が、この階級から登場してきた。

 マッドーニさんは、パルケとボカ・ジュニアーズ(Boca Juniors)の育成部門でスカウト部長を務める業界のレジェンドだ。カルロス・テベス(Carlos Tevez)やファン・ロマン・リケルメ(Juan Roman Riquelme)、フェルナンド・レドンド(Fernando Redondo)、エステバン・カンビアッソ(Esteban Cambiasso)ら、マッドーニさんが「発見」し、世界的なスターの座に駆け上がっていった選手は100人を超える。

 ゴールが決まり、コートに叫び声が響く。マッドーニさんは笑みを浮かべ、回想にふけるのをやめて、「あの子が見えるだろう? あの金髪の子だ。あの子は良いものを持っている。しかし体の使い方とプレースピードにまだ課題がある」と1人の少年の才能を指摘する。そして誇らしそうに「ここは決して尽きることのない才能の泉だ。しかし誰より才能豊かな選手でも、学ばなくてはならないことはある」と話した。