【12月26日 AFP】チュニジア内務省は25日、西部の都市カスリーヌ(Kasserine)でジャーナリストが生活難に抗議して焼身自殺したことを受けて発生したデモ隊と警官隊の衝突で、警察官6人が負傷、デモに参加した9人が拘束されたと発表した。

 ジャーナリストのアブデル・ラザック・ゾルギ(Abdel Razaq Zorgi)氏(32)は生前公開した映像で、「生活の糧を得るすべがないカスリーヌの人たちよ、今日私は革命を起こす。自らに火を付けるのだ」と語っていた。ゾルギ氏は焼身自殺し、24日に死亡した。

 ゾルギ氏の死を受けてカスリーヌ市内では24日夜から25日にかけてデモ隊と警官隊が衝突。タイヤを燃やしたりメインストリートを閉鎖したりした数十人のデモ隊に対し警察は催涙ガスを発射した。

 現地のAFP記者によると、25日朝は一時落ち着いたものの、午後になるとゾルギ氏の葬儀を終えた人たちが再び市内の通りに繰り出し、カスリーヌ県庁前で警察と衝突した。警察は再び催涙ガスを発射してデモ隊を排除した。

 チュニジア全国ジャーナリスト組合は、ゾルギ氏は「困難な社会情勢と希望がない状況」に死をもって抗議したとして、報道機関の大規模ストライキを検討していると明らかにした。

 2010年12月、生計を立てるために行っていた路上での野菜売りを警官に禁じられた若者が焼身自殺したのをきっかけに、騒乱が瞬く間にチュニジア全土に広がった。カスリーヌはこの野菜売りの男性の死を受けて立ち上がった最初の町の一つで、抗議デモで警察によって殺された人もいた。

 当時のジン・アビディン・ベンアリ(Zine El Abidine Ben Ali)大統領は失脚し、翌年から中東の広範囲に広がった民主化運動「アラブの春(Arab Spring)」につながった。ベンアリ氏失脚後のチュニジアは民主化し経済も成長したが、政府は今も貧しい国民生活の改善に苦慮している。(c)AFP