【12月24日 AFP】冷戦下ベルリンの映画館で1950年代に生まれた愛は、毎日少なくとも1本の映画を一緒に見ることで、60年以上もの間育まれ続けてきた──。この映画好きの2人は、エリカ・グレゴール(Erika Gregor)さん(83)とウルリッヒ・グレゴール(Ulrich Gregor)さん(85)夫婦だ。先週始まったベルリン国際映画祭(Berlin film festival)では、もはや常連となっている2人。会場では、できるだけ多くの映画を見ようと、共に腕を取り合いながら劇場から劇場へと慎重な足取りで移動する姿を毎年見ることができる。(※この記事は、2018年2月19日に配信されました)

 2人は市内の映画館「アーセナル(Arsenal)」で取材に応じ、これまで「数え切れないほどの映画を一緒に見た」と述べた。この映画館の立ち上げにもグレゴールさんらは関わっている。

「私たちは何でも知りたい。最先端にいたい。だから(映画祭では)1日に5本、時には6本の映画を見る。映画を見ていないときは、映画の話をしている」

 夫婦のこうした情熱の共有は、結婚してから60年近くたってもその関係を強固なものにしている。

 2人は1957年、当時の西ベルリンにあったベルリン自由大学(Free University of Berlin)の学生だった頃に知り合った。当時ウルリッヒさんは、映画の上映会を開催していた。

「あれは(1930年制作のドイツのサイレント映画)『日曜日の人々(Menschen am Sonntag)』だった。会場にはこの映画に対して非常に強い意見を持つ女性がいた」とウルリッヒさんはその日の様子を説明した。すると「皆、あの映画が好きだったようだけれど、私は性差別的だと思ったからそう発言した」とエリカさんが補足した。

「白熱した議論が飛び交ったけれど、私は主張を曲げなかった。終了後、私が会場から出て行くと、進行役(ウルリッヒさん)が追い掛けてきて『次回もぜひ来てください』って。次はもっと人間主義的な映画を上映するって約束して、実際にそうしてくれた。あれは良かった」