■「救出できなければ、彼女たちは奴隷になってしまう」

 ブルードラゴンは日々1、2件の救出要請を受け、最も多い月で8人の女性たちを救出している。

 救出作戦の様子は、写真や動画でしっかりと保存している。娘と再会し涙を流す母親たち、にっこりと大きな笑顔を見せる10代の少女たち──こうしたイメージを見ることで、救出作戦の士気が高まるのだという。

 ストリートチルドレンや性虐待被害者の支援もしている同団体の創設者で、オーストラリア人のマイケル・ブロソウスキ(Michael Brosowski)氏はこう語る。「私たちが救出することができなければ、彼女たちはそこで奴隷となってしまう」

 レ・ティー・ブー(Le Thi Vu)さん(仮名、21)は、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の売春施設に4か月にわたって閉じ込められていた。彼女はそこで、1日に最大12人の客を相手にすることを強いられていた。

 施設からの脱走には、売春あっせん業者に捕まり、殴られたり、殺されたりするリスクが伴う。それでも妊娠を恐れ、心に深い傷を負ったブーさんは、こうしたリスクを理解した上で電話を購入し、家族に連絡をした。その後、ブルードラゴンの方に家族からのコンタクトがあった。

 しかし、中国語が読めないブーさんは、道路標識の文字を理解することができず、自分がどこにいるのかさえも分からなかった。唯一見つけたのが、向かいのホテルの看板にあった電話番号だった。電話越しにそれを伝え、その2か月半後に救出作戦が実行された。

 救出作戦の当日、ブーさんはもう一人のベトナム人女性と一緒に、売春施設の隣にあった美容院を訪れていた。そして待機中の車両を見つけると、そのまま車に向かって猛ダッシュした。捕まらないようにと祈りながら。

 数日後、2人はベトナムに戻っていた。「まるで生き返ったような気持ちです。母に会えてうれしい」とブーさんはAFPの取材に語った。