【12月18日 AFP】カンボジア北東部ストゥントレン(Stung Treng)州で17日、同国最大級の水力発電所ダムが操業を開始し、フン・セン(Hun Sen)首相が出席して開業式典が行われた。

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 この発電所は、カンボジアの大手財閥ロイヤルグループ(Royal Group)、中国国営ハイドロランチャン国際エネルギー(Hydrolancang International Energy)、ベトナム電力総公社(EVN)の合弁事業としてメコン川(Mekong River)支流沿いに建設された「セサン下流2水力発電所ダム(Lower Sesan 2)」で、発電量は400メガワット。

 東南アジアの貧困国の一つであるカンボジアは近年、エネルギーの増産と経済活性化を目指し、中国の資金提供を受けて次々とダムを建設している。

 だが、約7億8000万ドル(約880億円)を投じたダム建設プロジェクトをめぐっては、周辺環境や地元住民への影響が懸念されており、環境保護運動家らはメコン川流域住民の生活に必須である魚の資源量が減少するとして、セサン2を含めたダム建設を批判。セサン2ダムについては、周辺住民5000人前後が立ち退きを余儀なくされる恐れがあると指摘する。その多くはカンボジアの辺境地に住む先住民族だ。

 これに対し、フン・セン首相はセサン2ダムの開業式典で、ダム建設は電気料金の引き下げに役立つと主張。影響を受ける住民たちには住宅と土地を支給していると説明し、「ほとんどの住民は発電所プロジェクトを支援している。外国人に扇動された一部の住民が困難な状況を作り出している」と述べた。

 セサン2ダムに関しては、以前から国連(UN)が繰り返し懸念を表明。カンボジアの食糧安全保障を脅かすと危惧する科学者らも、建設中止を求める共同声明を出していた。(c)AFP