■厳重な防備でも防げず

 フランスでは2015年、数十人が死亡したイスラム過激派による襲撃を皮切りに、無差別攻撃が続いた。以来、ストラスブールのクリスマス市には厳重な防備が施されてきた。

 例えば、イル川(River Ill)の中州にある市中心部への交通は、周辺地区と結ぶ橋約20本を通じて厳しく規制されている。それでも、ナイフや拳銃を持った今回の襲撃犯の侵入を防げなかった。

 毎年、クリスマスの時期になると、市内のクレベール(Kleber)広場には高さ30メートルのクリスマスツリーが設置され、その電飾に照らされながら、およそ300軒の木造小屋(シャレー)に入る店が客に温ワインやソーセージを振る舞う。

 しかし、襲撃があった夜には、アルザス(Alsace)地方特有の、木の梁(はり)がむき出しになった伝統的な家並みを縫うように走る路地や通路に、犠牲者が倒れていた。

「ここであんなことが起きるなんて、信じられない」。市内に住む医大生の女性は戸惑いを隠さない。「ストラスブールにとって初めての出来事。本当に平和な町なのに」

 ストラスブールのクリスマス市は長年、攻撃の主要な標的とされてきた。2000年12月には仏当局が爆弾攻撃を未然に阻止。国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)とのつながりが疑われる男4人を逮捕している。

 また、2016年12月にドイツのベルリンでイスラム過激派の男がクリスマス市にトラックで突っ込み、12人が死亡した事件のように、車を使った襲撃を防ぐため、コンクリート製の車止めを設置したり、路面電車の線路の間に溝を掘ったりする措置も、今では普通に取られている。

 ローラン・ヌニェス(Laurent Nunez)副内務相は11月23日に開かれたクリスマス市の開始式典で、「テロの脅威は依然として非常に大きい」と指摘。「われわれの部隊は、ストラスブールとフランスにとって大きな行事で、世界各地から多くの人が訪れるクリスマス市の安全を確保する態勢を取っている」と述べていた。

 警備予算も2015年以降、以前の3倍超に当たる100万ユーロ(約1億3000万円)に増額。通常の日は警官約260人に加え、民間の警備員160人と地方の警備要員50人が動員されている。

 フランス当局は、パリで2015年1月に風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)の漫画家ら12人がイスラム過激派による襲撃で殺害された事件を受けて、対テロの「サンティネル(歩哨)作戦」を実施。ストラスブールでは同作戦に従事する兵士数十人も警戒に当たっていた。今回の襲撃でも、最初に銃声に反応したのはサンティネルの兵士たちだった。

 ストラスブールのローラン・リース(Roland Ries)市長は「きのうは楽しい時を過ごせていたのに、きょうはいささか沈んでいる」と述べ、クリスマス市が再開しても、今回の事件がクリスマスの祝賀ムードに影を落としそうだと懸念を示した。(c)AFP/Marie DHUMIERES