■EUを分断した移民をめぐる議論

 匿名を条件にAFPの取材に応じたあるEU外交官は、第2次世界大戦(World War II)以降の欧州で最悪とされる2015年の難民危機への対応が、適切でなかったと話す。「あれは政治的な失態だった」とまで言う。

 移民をめぐる議論は、独裁主義者や右派ポピュリストらに利用され、EUをばらばらに分断した。

 国連(UN)は10日、モロッコでの会合で、移民対策の国際的な枠組み「安全で秩序ある正規移住のグローバル・コンパクト(The Global Compact for Safe, Orderly and Regular Migration)」、通称「国連移民協定」を採択したが、EU内の7か国は、3年以上もの間、同協定への参加を拒否している。

 移民をめぐる政治の行き詰まりは、ドイツ与党・キリスト教民主同盟(CDU)の党内部で、反首相派がメルケル氏を党首退任に追い込む以前から徐々に同氏を弱体化させていた。

■ジレ・ジョーヌ運動

 フランスではマクロン大統領が、自らのリーダーシップに対する数々の課題に直面している。従来の対立勢力に加えて、予測不能な「ジレ・ジョーヌ」運動まで勃発。マクロン氏の政策に対する抗議行動は、数週にわたって続いている。

 オランダ人の政治アナリスト、ルーク・バン・ミデラール(Luuk van Middelaar)氏は、「マクロン氏が掲げるEU改革も、フランス国外では誰も耳を傾けない」と話す。

 欧州委員会を率いる委員長のポストには、今のところ強い個性を持つ人物は立候補していない。フランスでは、同選挙がマクロン政権の是非を問う国民投票の様相を呈する可能性もある。

 EU懐疑派政党は、英国の欧州議会議員の離職に伴い多くの仲間を失うことになっても、欧州議会選で躍進する可能性もある。

 しかし、イタリアのエンリコ・レッタ(Enrico Letta)元首相は楽観的だ。現在は仏シンクタンク、ジャック・ドロール研究所(Jacques Delors Institute)の所長を務めるレッタ氏は、「ポピュリストにとって、一つにまとまることは非常に複雑で難しいことだろう」「ポピュリストは、批判にさらされれば後退する」と語った。(c)AFP/Christian SPILLMANN