【12月13日 AFP】キプロス沖に沈む2400年前の沈没船の考古学的発掘調査により、地中海における古代造船技術の進化の一部が明らかになった。考古学当局が12日、明らかにした。

 キプロス島南部沿岸のマゾトス(Mazotos)の沖合で紀元前4世紀半ばに沈没したこの船は、この海域で最も保存状態の良い沈没船の一つと考えられている。

「発掘された船材を詳細に調査した結果、造船技術の非常に重要な要素の一つが明らかになった。それは、竜骨(船底の中心を縦に走る構造材)と竜骨翼板(竜骨に隣接する両側の底板)と船首材をつなぎ合わせるのに、ひもとほぞ接合の両方が使われたことだ」と、キプロス考古局は説明した。

 ワインのつぼを運搬中に沈没したこの船で発見された今回の証拠は、ギリシャ人とフェニキア人という二つの優れた海洋民族に関連づけられると、考古局は指摘している。

「(ひもとほぞという)2種類の技術が同じ船で使われていることにより、地中海東部における古代の造船の歴史というパズルに重要な1ピースが追加される」と、考古局は述べている。

「この歴史はこれまで、わずか二つの沈没船発掘調査のみに基づくものだった。その二つは、イスラエル・マーガンミカエル(Ma'agan Michael)の紀元前5世紀末期の沈没船と、キプロス・キレニア(Kyrenia)の紀元前3世紀初期の沈没船だ」

 マゾトスの沈没船は、これら二つのちょうど中間に当たり、古代海軍技術の進歩に関する空白部分を埋めているという。

 考古局によると、2007年に開始され今年で7回目となる今回の発掘調査の目的は、陸から2キロ離れた沖合の水深約45メートルの海底に沈む船の船首部分の発掘を完了することだったという。

「船体の一部の比較的良好な保存状態は、造船技術に関するより明解な証拠が次回の発掘調査で見つかることを示す前途有望な兆しだと期待している」と、考古局は述べている。

 今回の調査では、一部または全体が保存された状態のギリシャ・ヒオス(Chios)島のアンフォラ(二つの取っ手が付いた首が長いつぼ)が合計で70個回収された。これにより、沈没船の前甲板の下の船倉に積み込まれていたアンフォラの数が全部で99個になった。

 考古局によると「これらのアンフォラの大半はワインが入れられていた可能性が最も高いが、少なくとも1個はオリーブの種が一杯に詰まっていた。これは乗組員の食用のためだったと考えられる」という。

 また、「魚釣り用のおもりが2個発見された。これは当時の船乗りたちの船上生活を垣間見せるものだ」と、考古局は述べている。(c)AFP