■都市部の洞窟は「非常に珍しい」

 開設時からセンターを運営するアッティラ・ホッスー(Attila Hosszu)氏は、「ここはダイバーを受け入れているブダペスト唯一の水中洞窟だ。洞窟探検はニッチ市場で、大衆的な人気があるわけではない。それにこれが都市部にあることが特別なことなのだ。非常に珍しい」と語る。

 洞窟が都市の地下にあるという利点は、さまざまな器材を山の上や谷底まで運ばなくて済むことだという。

 同センターへは、ブダペストの大通りの一つに近い、ドナウ(Danube)川からわずか1ブロックのところにある目立たない金属のドアが入り口となっている。

 センターのウェブサイトによると、この洞窟は何千年も前、ブダペストの下を走る断層線が裂けたときに形成されたものだ。上昇した温泉が岩盤に浸食し、地表付近に洞窟ができたのだ。

 1950年代から開始された探査で、水面下の峡谷、広間、通路などの全容が明らかになり始めた。だが3年前にセンターが開設されるまでは、洞窟に入ることが許されたのは、研究室での試験のための試料収集や探査を行う科学者だけだった。

 近隣に住むソフトウエア開発者で、パートタイムのダイビングインストラクターを務めるマートン・イレーシュ(Marton Illes)さん(37)は、年間を通して20~27度という快適な水温が、もう一つの魅力だという。「潜水は今回で15回目だが、まだうわべをなでているにすぎない。ここには多くの見どころ、多くの通路がある」

 洞窟の独特の生態系を保存するため、ダイバーの人数は1日当たり30人に制限されている。料金は潜水の深度により60~140ユーロ(約7800~1万8000円)だが、最深は90メートルまでと決められている。深度により時間制限もあり、現在は150分までだが、まもなく無制限潜水が可能となる。

 洞窟の常連である、海洋生物学と生態学の専門家のダビッド・ブランコビッツ(David Brankovits)氏は、「ここで発見される生物は他のどこでも見つけることはできない。科学者はこれらの生物の進化、食料、エネルギー源についての研究が可能だ」と語った。(c)AFP/Peter MURPHY / Balazs Wizner