■合意なき離脱

 英国の正式なEU離脱日は、リスボン条約第50条の発動2年後の2019年3月29日となっている。

 メイ首相はこれまで英議員に対して、離脱協定案を否決すれば英国は合意がないまま同日にEUを離脱し、ひどい混乱に陥りかねないと再三警告している。

 その場合、最も密接な貿易相手であるEUとの関係が一夜にして断たれ、医薬品が不足したり、空港や港湾、道路がまひ状態に陥ったりする状況が懸念されている。

 中央銀行のイングランド銀行(Bank of England)も、金融危機や住宅価格の下落、通貨ポンドの急落といった事態を招きかねないと警鐘を鳴らす。

■国民投票やり直し

 こうした中、EU離脱の是非を問う国民投票を改めて実施するという案が、党派を超えて支持を集めている。

 メイ首相自身は2回目の国民投票実施の可能性を重ねて否定しているというが、政治的に立ち行かなくなれば投票実施の圧力に直面するに違いない。

 欧州司法裁判所(ECB)は10日、英国はEU離脱の決定を一方的に撤回できるとの判断を示し、再投票派に追い風も吹いている。

■総選挙か党首選

 こう着状態にある議会を打開するために、メイ首相には総選挙に打って出るという手段も残されている。ただし、それには3分の2以上の議員による賛成が必要だ。

 一方で、野党・労働党がメイ首相に対する不信任動議を提出し、投票が実施されれば、メイ首相は単純過半数で内閣総辞職に追い込まれる可能性もある。労働党の広報担当者は、不信任動議を出すのは「勝算があると判断した」場合だけだと言っている。

 首相不信任となれば、議会の承認で2週間以内に新内閣が発足する。その場合、連立政権になる可能性もある。

 与党・保守党の議員がメイ首相降ろしに動く可能性もあり、英メディアは連日、誰が首相に引導を渡すことになるか臆測を伝えている。(c)AFP