幾何学的に単純化された線と独特の色彩が織りなす、具象とも抽象ともつかない作品を見るたびに、イマジネーションが刺激され、夢想に遊ぶことができる、それがパウル・クレーのおもしろさ。そして、意図的に構図を破綻させ、諧謔をもてあそぶ巧妙なセンスにはいつも圧倒される。東京で鑑賞できる《破壊された村》を見たときもそうだ。壊滅したはずの建物に生き物のような躍動感を感じるからなんとも不思議。このクロノグラフには、時間の計測中に瞬時に針をゼロにリセットして即在に再スタートが可能なフライバックという機能がある。いうならば、切り取られ破壊された時間と、即座に再生する新しい時間の連続だ。ストラップのパンチングと建物の窓は単純に似ていなくもないが、それより再生のドラマにこの時計と作品の競演を見た。 (菅原)

マネロ フライバック レトロ

マネロ フライバック レトロ
赤いクロノグラフ針を配したブラック・ダイアルは、横2つ目の配置が戦前のスタイルに通じる。自然なユーズド感を施したクーズーレザーのストラップもレトロな雰囲気を盛り上げる。自動巻きフライバック・クロノグラフ、ステンレススティール、ケース直径43㎜、3気圧防水。税別88万円。
マネロ フライバック レトロ
時計名に“レトロ”とつく理由、それはクラシックな2カウンターのダイアルとシルバー・カラーのインダイアル、そして贅沢に厚く切り出したサファイアクリスタルを丹念に磨き上げたボックス型の風防に尽きる。この風防のボリュームがバルキーなストラップにジャスト・フィット。短く詰められたラグにより、大型ヘッドだが腕なじみがいいのも嬉しい。

時計のお問い合わせ=ブヘラジャパン

Tel.03-6226-4650
www.carl-f-bucherer.com/ja

パウル・クレー《破壊された村》

パウル・クレー《破壊された村》
1920年 油彩、厚紙にアスファルト下地 30.4×25.3㎝ 東京国立近代美術館蔵
パンチング・ストラップが強烈な男臭さを感じさせるブヘラの1本に、同じスイス生れのパウル・クレー(1879~1940)の作品《破壊された村》を合わせた。鬱勃とした絵の色調の中には、歪な建物が配置され、その建物の窓枠は、あたかも時計のストラップの穴のようにも見えて興味深い。この絵に緊迫した力強さを感じるのは、クレーの心に残った戦争の痕跡の心象風景ゆえであろうか。無骨な時計のイメージが共鳴した。来年~再来年にかけて東京国立近代美術館で開催される「窓展」(仮称)出品作。

「窓展」(仮称)

2019年11月1日(金)~2020年2月2日(日)
東京国立近代美術館 www.momat.go.jp
美術から建築、社会学、哲学――各分野の知見を活かしながらさまざまな切り口で「窓」にアプローチする企画展。クレー、マティスなどから、現代アートまでジャンルを横断して展観する試み。