【12月2日 AFP】中国で収賄の罪に問われ、国外逃亡していた地方政府の元役人が、滞在していたブルガリアから中国側に身柄を引き渡された。中国の汚職摘発機関「国家監察委員会」が明らかにした。今年3月に設置された同委員会によると、欧州連合(EU)加盟国が同委員会の要請に応じて容疑者を引き渡すのは初めて。

 中国側に身柄を引き渡されたのは、中国東部・浙江(Zhejiang)省新昌(Xinchang)県当局の幹部だった姚錦旗(Yao Jinqi)容疑者(62)。国営新華社(Xinhua)通信によると、姚容疑者は2005年に収賄の罪に問われ、国外に逃亡。中南米やフィリピンを転々とした後、ブルガリアに落ち着いていたが、国際刑事警察機構(インターポール、InterpolICPO)が国際逮捕手配書「レッド・ノーティス(赤手配書)」を出したことを受けて先月、ブルガリア当局に逮捕されていた。

 ブルガリアの首都ソフィア市裁判所の文書をAFPが入手したところ、姚容疑者は11月26日に行われた法廷審問で、死刑に問われる恐れがないことが立証されたため中国への送還に同意したという。

 ソフィア市裁判所の文書は、姚容疑者が問われる犯罪について「中華人民共和国の法律を鑑みて、禁錮3~10年、罰金、財産の没収などが科される可能性はあるが、死刑は適用されない」とし、さらに「暴力や拷問、残虐で非人道的、屈辱的な罰を受ける恐れがあると考える理由はない」と付け加えている。

 中国政府は、習近平(Xi Jinping)国家主席が進める汚職撲滅キャンペーンの一環として、汚職や経済犯罪に問われて国外逃亡した容疑者らの引き渡しを各国に求めている。しかし、中国の法制度の不透明さや適正手続きの欠如を理由に、米国やカナダなど欧米諸国の多くは引き渡しに消極的で、中国側の狙い通りに容疑者が送還された例は多くない。(c)AFP