■絶滅危惧種も材料に

 だが、伝統薬は個々人に合わせて調合するため、たとえ同じ症状でも、人により内容や用量が異なることもあり、輸出には依然として大きな壁が立ちはだかる。

 岳陽医院の肛門科医師、王振宜(Wang Zhenyi)氏は、「絵画では絵により構図が異なるように、中国伝統薬は個人により構成が異なる。(西洋薬は標準化されており)絵画より写真に近いと言える」と説明した。

 中国伝統薬には、多数の原料があり、組み合わせによりどのような相乗効果があるか、どのように効能を引き出せばいいか、理解しなければならず、複雑な作業が求められる。

 中国伝統薬の効能をめぐっては、中国国内でも、科学的根拠を求める医師と伝統薬支持者との間に意見の相違がある。

 自然保護活動家は、サイの角やセンザンコウのうろこなどの需要の高まりが、絶滅危惧種の減少に拍車をかけていると懸念を示している。このような製品の効用は医学的に立証されていないが、伝統薬に使われることがある。

 中国政府は昨年10月、自然保護活動家らによる警告にもかかわらず、トラの骨とサイの角の取引を一部解禁した。だが国営メディアはその後、当局の話として、この変更が「延期された」と伝えている。

 だが、伝統薬市場に挑戦する企業も出てきた。フランスのバイオ技術企業ファーネクスト(Pharnext)は昨年、中国の伝統薬製造最大手タスリー(Tasly)と提携した。

 両社は、人工知能(AI)を使い、中国伝統薬がどのように作用するのか解明しようとしている。(c)AFP/ Etienne BALMER