■漁獲可能量の多さも一因

 ヨーロッパウナギの一生は、エメラルド色をした北大西洋のサルガッソ海(Sargasso Sea)から始まる。卵は、潮の流れに乗って大西洋を横断し、餌場である欧州に渡る。時には2年かかることもある。稚魚は川を上り、虫などを餌にして、最長25年の年月を過ごす。成魚になると、再び4000マイル(6500キロメートル)を旅してカリブ海の故郷に戻り、繁殖し、一生を終える。

 ウナギは今、密漁や環境汚染など人的脅威によって危機に陥っている。欧州全域の河川に設置された推定130万か所のせきも、ウナギの移動の妨げになっている。

 仏環境団体「ロバンデボワ(Robin des Bois)」のシャーロッテ・ナイトハルト(Charlotte Nithart)代表は、フランスのウナギの漁獲可能量は年間60万トンで、そのうち60%を再生産にまわすことになっていると説明する。漁獲可能量の多さも種の減少に拍車をかけていると言う。

「密輸だけにウナギ絶滅危機の非があるとは、私たちは一度も言っていない」

■高まる危機

 ユーロポールはここ数年、何件かのウナギの大規模密輸を摘発している。例えば、スペイン警察は今年4月、350キロの稚魚を保有していたウナギ密輸団を逮捕した。

 だが、密輸団が逮捕され、いくつか裁判が行われてはいるが、ウナギの密輸は他の密輸犯罪に比べ罰則が軽いと、活動家は指摘する。

 英イングランドで11世紀に作成された全国調査の記録簿「ドゥームズデイ・ブック(Domesday Book)」の記述から、当時ウナギが税金として納められていたことが分かる。

 だが、現在の欧州では、大規模な密輸の横行により、保護の取り組みが骨抜きになっており、ウナギ絶滅の懸念が高まっている。

「悲しいことに、今日の人間は自然との触れ合いを失っている。ウナギはまさにそれを象徴している」とカー氏は語った。(c)AFP/Patrick GALEY and Manon BILLING