【11月26日 AFP】(更新、写真追加)ロシア連邦保安局(FSB)は25日、ロシアが併合したクリミア(Crimea)半島付近の黒海(Black Sea)で、ウクライナ艦船3隻を拿捕(だほ)したと発表した。ウクライナ海軍によるとロシア側から艦船に対する発砲もあり、6人が負傷した。軍事的緊張が高まる懸念が出ており、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)は双方に自制を求めた。

 米国のニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)国連(UN)大使は、この問題をめぐって国連安全保障理事会(UN Security Council)が26日に緊急会合を開くとツイッター(Twitter)で明らかにした。外交筋によると開催はロシアとウクライナがそれぞれ要請した。

 ウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領は軍事閣議による勧告を受け、60日間の戒厳令を発令するかどうかについて、議会に26日に投票を行うよう求めた。

 ウクライナ海軍によれば、この前例のない出来事があったのはクリミア近くのケルチ海峡(Kerch Strait)。同軍の小型艦船2隻とタグボート1隻がマリウポリ(Mariupol)港を目指して同海峡を通過しようとしたところ、ロシアの国境警備艦がタグボートに突っ込むという「あからさまな攻撃行動」を起こし、ウクライナ艦船2隻のうち1隻に向けて発砲したという。

 タグボートは衝突でエンジン、船殻、手すりに損傷を受けたとされる。ウクライナ側は兵士6人が負傷したとしているが、FSBは3人が負傷したものの命に別条はなく、治療を受けたと説明している。FSBは「ウクライナの艦船を停止させるため、武器を使用した」と認めている。

 ウクライナ海軍は、同海峡はタンカー1隻で閉鎖されており、ロシア軍機が同地域上空を飛行しているとも訴えている。

 ウクライナ側はロシア側による発砲や拿捕を非難。一方、2014年にクリミア半島を併合して以降、クリミア沖の水域の領有権を主張しているロシアも、ウクライナ海軍側がロシアの領海内に侵入し、意図的な挑発を行ったと主張している。

 事態を受けてEUは「ロシアがケルチ海峡の通行の自由を回復するよう期待するとともに、緊張を直ちに緩和するため、全当事者に対し最大限に自制して行動するよう求める」と表明。NATOも声明を出し「自制と緊張緩和」を求めた。(c)AFP/Ania TSOUKANOVA