【12月9日 AFP】タイの僧侶、ピピット・サーラーキットウィノン(Pipit Sarakitwinon)さん(63)は毎朝、寺の周りを歩き、腕のエクササイズを数百回行う。同国では肥満になる僧侶が増えているため、保健当局などが問題への対策に乗り出している。

 タイでは僧侶が深く敬われており、信者たちは盛んに食べ物を施す。だが、喜捨される食べ物には、砂糖、脂肪、油がたっぷり入ったものが多く、これが僧侶の健康問題につながっている。

 バンコク市内の病院で行われた僧侶向け健康診断中にAFPの取材に応じたピピットさんは、「ダイエットをする前は、100メートルも歩かないうちに疲れてしまっていた」と話し、以前は体重が180キロあったことにも触れた。

 タイの保健当局と宗教当局は2017年12月、僧侶の間で、糖尿病、高血圧、膝の問題が急増していることを受けて、「僧侶のための健康ガイドライン」を作成し、食べ物に気を使うよう呼び掛けた。

 タイの人々は、毎日托鉢して回っている僧侶に食べ物を喜捨することで徳を積み、先祖供養をしている。だが、これについては厚意が行き過ぎてしまったともいえる。濃厚なカレー、砂糖たっぷりのお菓子、炭酸飲料、塩辛いスナックなど、僧侶に施す食べ物は、高カロリーで不健康なものが多いのだ。

 アジア開発銀行(AIB)によると、タイはアジア有数の「肥満国」だという。チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)の保健医療学部が2016年に僧侶を対象に実施した調査によると、約48%が肥満、約42%が高血圧と診断された。

 タイでは、僧侶の正午以降の食事が禁じられている。ブッダも、午後は食事を控えるよう信者に対して言ったと伝えられている。

 だが、仏典に出てくる「パナ」と呼ばれるある特定の飲み物だけは、正午を過ぎても摂取することが許されている。だが、この飲み物に砂糖がたっぷり含まれているのだ。

 タイの小売店舗では、加工食品などを詰めたお布施セットが販売されており、誰でも簡単に入手できる。だが、これも問題を悪化させている原因の一つとされている。