【記者コラム】オペラカーテンの後ろで
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【11月30日 AFP】最終的に、バレエ団の舞台裏の取材は、芸術への情熱があふれる復活の物語となった。
最初にリオデジャネイロ市立劇場バレエ団に取材を依頼したときの動機は、洗練されたバレエ公演の舞台裏の様子や人々の思いを捉えたいという単純なものだった。バレエ団というものは、自分たちのイメージにうるさく、中に入るのも難しいことが多い。長年、多くの人がバレエ団の「舞台裏」を取材したのを見てきたが、写真そのものの数は限られていた。私は舞台裏をもっと見せたかった。
しかしここはブラジルだ。結果は想像以上のものとなった。
バレエ団が所属するリオデジャネイロ市立劇場(Rio de Janeiro Municipal Theater)は、アールヌーボー様式で、リオデジャネイロの中心部に立つ。
バレエも含めすべての芸術関連プログラムが、ここ数年のブラジル経済危機の影響を受けた。景気が急速に悪化すると、文化や芸術関連の予算は真っ先に削られた。リオのバレエ団は公的資金で運営されていたため、非常に深刻な影響を受けた。
このバレエ団は1年前、チケット代金を現金ではなく食料で受け取っていた。それほどひどい状況だった。(国を離れなかった)バレエダンサーたちは、食料を恵んでもらっていたのだ。
私が連絡を取った時、バレエ団は2017年以来1年ぶりとなる公演の準備をしているところだったので、みんな感情が高ぶっていた。ブラジル人は非常に感情的なので、バレエ団は高揚感にあふれていた。今回は、「薔薇の精(Le Spectre de la Rose)」「レ・シルフィード(Les Sylphides)」「ライモンダ(Raymonda)」の3作品を演じる予定だった。
バレエ団は期待以上に私を受け入れてくれた。1週間以上にわたり、好きなところはどこでも歩き回り、リハーサルと2回の週末公演を取材することができた。
私に対する待遇が、ブラジル人について多くを語っている。このような取材の時はいつも取材する人との関係を築くことを重視しているが、私がポルトガル語を話せないこともあり、今回はそのような時間はなかった。だが、彼らは完全に私を受け入れてくれた。
すぐに、彼らは私が存在していないかのように振る舞った。通常のバレエ公演では見ることができない、ダンサーの感情や様子をありのまま捉えることができた。
バレエは身体を厳しくコントロールする芸術で、すべての動きは振り付けされ、統制されている。観客は舞台に向かって座る。だが、私は舞台の裏、袖、楽屋に入り込み、出番を待つダンサーの写真を撮った。普段は見ることができないバレエの裏側が分かるいい写真が撮れたと思う。
このコラムは、リオデジャネイロを拠点とするカール・デ・スーザ(Carl De Souza)カメラマンが執筆し、2018年11月1日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。