【11月20日 AFP】男性優位の韓国の企業文化において、女性は足掛かりを見つけるのにも苦心することが多いが、最近では採用時に女性差別を行っているとして複数の企業が告発される事態も起きている。

 韓国の大学を卒業したケイシー・リー(Casey Lee)さん(25)は面接を受けた際に採用担当者から、女性は子どもができると仕事を辞める傾向があると言われたり、リーさんのような若い未婚女性は「国の将来のために」子どもをもうける責任を放棄していて「無責任」だと厳しく批判されたりしたことがある。

「大声で叫びたかった。『私は仕事に就くために、ここに来ただけなんです』って」。AFPの取材に応じたリーさんは憤った。面接で同じグループになった男性志望者らには、そうした質問はほとんどなかったという。

■社会的信用の失墜

 最近、韓国の4大銀行のうち3行が、採用試験の合否判定に男女比を設定していたとして告発された。その目標を達成するために、筆記試験や面接時に女性の点数は低く、男性は高く改ざんしていた疑惑がもたれている。

 起訴されたり有罪判決を受けたりした幹部は合計18人に上り、この中には韓国金融業界2位の「新韓金融グループ(Shinhan Financial Group)」の会長も含まれている。

 11月上旬には最高裁が、韓国ガス安全公社(KGS)の元最高経営責任者(CEO)に対し、収賄や男女雇用平等法に違反した罪で4年の実刑判決を言い渡した。

 昨年公表された韓国政府の調査結果によると、同国の大手企業500社の最高幹部1万5000人のうち、女性の占める割合はわずか2.7%にとどまる。また男女の賃金格差は36.7%に上り、「先進国クラブ」とも呼ばれる経済協力開発機構(OECD)の中では最低水準だ。

 KGSのパク・キドン(Park Ki-dong)元CEOは、最終選考に残った31人のうち最高得点者を含む女性7人を不合格とし、代わりに成績の低かった男性たちを合格させるよう指示したとされる。パク元CEOは、女性が産休を取ると業務に支障が出ると思ったと主張した。

 保守的な韓国では、多くの既婚女性が、就業の有無にかかわらず家事と育児を一人で担うよう求められ、こうした二重の負担が、世界最低水準の出生率となっている要因だとみられている。

 保育所が不足していることに加え、韓国は労働時間が長いことでも知られており、多くの女性たちは子どもが生まれると仕事を辞めてしまう。