【11月19日 AFP】「アイビーリーグ(Ivy League)」と呼ばれる米名門私立大8校の一角を占めるダートマス大学(Dartmouth College)の卒業生と在校生の女性7人が、長年にわたり女子学生に性的虐待やハラスメント、レイプを行ってきた教授3人を野放しにしていたとして、大学理事会を相手取り7000万ドル(約79億円)の賠償金を求める訴訟を起こした。

 米北東部ニューハンプシャー州の連邦地裁に15日に提出された72ページの訴状によると、ダートマス大では心理学脳科学部の教授3人が10年以上にわたって性差別や性的暴行、セクシュアルハラスメントを続けていた。大学理事会も被害の申し立てが複数あったのを認識していたという。

 いずれも著名で、終身雇用(テニュア)の教授として潤沢な研究費を得ていたトッド・ヘザートン(Todd Heatherton)氏、ウィリアム・ケリー(William Kelley)氏、ポール・ウェイレン(Paul Whalen)氏の3人は学部所属の女子学生たちを「優に10年以上」「性欲を満たす道具として扱っていた」という。

 3人は「女子学生をいやらしい目つきで見つめ、体をまさぐったり、みだらなメッセージを送りつけたりした。レイプされた学生も複数いた」と訴状は主張。また研究指導や学生支援を受ける条件として「アルコール漬けのパーティー」に参加することを学生に求めたといい、さらに「研究室の会合をバーで行い、学生を深夜に自宅に招いて『温浴パーティー』を開いた」ほか、薬物中毒に関する授業の中で「実技」の一環だとして本物のコカインを学部生に吸わせたという。

 原告の一人で現在イェール大学(Yale University)博士研究員の女性(30)は、カリフォルニア州での会議に出席した際、ケリー氏から過剰に酒を飲まされ性的暴行を受けたと訴えている。

 原告らの主張によると、大学当局は少なくとも2002年には既に教授3人の悪行を把握。また、2017年に大学院生のグループがセクハラと性的暴行の被害を申し立てたが、大学側はただちに対処せず、そのまま教授らの下で研究を続けるよう学生たちを説得したという。4か月近く後の同年10月になってようやく大学は教授3人を休職処分とし、ニューハンプシャー州の司法当局が犯罪捜査に着手した。

 しかし大学側は、被害を訴えた学生たちがカウンセリングを受けていることを知らされた後も何もしなかったとされる。一方の大学側は声明で、問題の教授3人は今年に入って解雇され、大学構内への立ち入りも禁じられていると説明。同大には性的不品行の行われる余地はないと主張している。

 ニューハンプシャー州の緑豊かな街ハノーバー(Hanover)にあるダートマス大には6400人ほどの学生が在籍しており、入学初年度の学費は総額7万4000ドル(約830万円)にも上る。

 全米の大学ではセクハラ告発運動「#MeToo(私も)」の盛り上がりを受けて、学内での性的な境界線をめぐる問題に改めて厳しい目が注がれている。今回の訴訟はこうした議論を再び活性化させることになるだろう。

 こうした中、ドナルド・トランプ(Donald Trump)政権のベッツィー・デボス(Betsy DeVos)教育長官は16日、米大学における性的暴行疑惑の調査方針を変更すると発表。セクハラや性的暴行の定義を狭める一方、認定されたものだけを証拠とみなすようにし、告発した被害者を厳しく追及することを認めるなど、加害者として告発された側により多くの権利を与えるデボス氏の提案を被害者団体などは強く非難している。(c)AFP/Jennie MATTHEW