【11月14日 AFP】過激派組織にとってスマートフォンは、もろ刃の剣だ。爆弾や銃と同じく強力な武器となる一方で、情報機関から追跡されるリスクもはらんでいる──。

 2015年11月13日に仏パリで発生した同時襲撃事件は、スマートフォンなしでは起きなかったと思われる大規模な襲撃事件の一つだ。市内のコンサートホール「バタクラン(Bataclan)」やその他のナイトスポットを襲撃したイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員らは、スマートフォンで仲間と連絡を取り合いながら計画を実行した。

 バタクラン襲撃の直前、戦闘員らはベルギーにいる共犯者に向けて「これから実行する。さいは投げられた」とテキストメッセージを送っていた。この襲撃では90人の命が失われた。

 スマートフォンの存在は、イスラム過激派組織にとって「ゲームチェンジャー(形勢を変えるもの)」となったかもしれないが、こうした携帯端末の利用は、それよりももっと前に始まっていた。

 ある元当局者はAFPの取材に、「イラクでは2003年ごろ、米軍の車列通過のタイミングに合わせてSMSを送信すると爆弾が爆発する仕掛けが存在していた。国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)も繰り返し使っていた手法だ」と述べる。

 最近では、テレグラム(Telegram)やワイヤ(Wire)、ワッツアップ(WhatsApp)などのメッセージアプリが過激派組織によって使われることが多いという。これらのアプリではメッセージが暗号化されるため、当局の追跡をかわしやすく、またメッセージの解読にもより多くの時間が必要となるためだ。ISも以前、戦闘地帯で最も検知されにくいソフトウエアの選び方を数か国語で説明したマニュアルをネット上で戦闘員らに公開していた。

 他方で、発展途上国では、スマートフォンがコンピューターよりも普及しているため、新たな戦闘員を勧誘する際のストラテジーもそれに合わせた形となっている。

 スマートフォンの画面をスワイプするだけで、「人々は簡単にプロパガンダに触れることができるようになった」と話す元当局者は、「30年前、彼らはビデオテープを交換していたが、その後CDになった。今はインターネットの時代となり、いつでも調べられる」とその変貌について触れた。また、プロパガンダ映像の制作者らにとっては、攻撃の瞬間を録画し、すぐにその映像をネットにアップロードして、同時に犯行声明を流せるようにしたのもスマートフォンであると指摘している。