■今世紀中に臨界点に達する恐れも

 グリーンランドと南極の氷には、地球の海水面を数メートル上昇させるほどの量の水が含まれている。グリーンランドの氷床の場合、1990年代半ば以降、融解によって世界の海水面は毎年0.7ミリ上昇している。

 また、極地では地球上の他のどの場所よりも速いペースで温暖化が進んでおり、グリーンランドだけでも1990年代半ば以降、冬季に5度、夏季に2度、気温が上昇している。

 科学者らのこれまでの予測では、たとえ気温が大幅に上昇しても、氷床の融解には数百年を要するとされてきたが、今回の研究は、温暖化が際限なく進行していくのを食い止める対策として、唯一、実現可能な計画への懸念材料を提示している。

 気温の上昇幅を1.5~2度に抑えるシナリオに基づく仮説の多くは、気温上昇幅の上限には短期間で達し、地球気温が数度高くなる可能性はあるものの、その後、炭素回収などの技術を活用すれば、2100年までに上限の水準に戻ることは可能だと唱えている。

 だが今回の研究は、こうしたアプローチに警鐘を鳴らしている。気温上昇によって引き起こされるフィードバックループ(フィードバックが繰り返されることで結果が増幅される状態)によって、たとえその上昇分が後で相殺されるとしても、「氷床全体が自然に融解していく状態が促される」と考えられると論文は指摘。グリーンランドの場合、広範囲にわたる氷床の減少が1.8度の気温上昇で発生する可能性はほぼ確実だ、と研究チームは主張している。

 パティン氏によれば、グリーンランドも南極も「今世紀末までに臨界点に達する可能性がある」という。(c)AFP/Patrick GALEY