■大人の学びの場にも

 一方で、予測不能な自然の猛威を乗り切るためのアイデアも出てきている。

 ダッカのBRAC大学(BRAC University)の学生は先月、洪水時に容易に移動できる水に浮かぶ竹製の家の試作品を公開した。

 水に浮かぶ学校は、シュシュという音をたてながら、洪水で広がった川や湖を移動し、バングラデシュの最貧地域の一つであるチャランビールの子どもたちに、教育の機会をもたらしている。

 この画期的なプロジェクトを運営する慈善団体「Shidhulai Swanirvar SangsthaSSS)」のムハンマド・レズワン(Mohammad Rezwan)代表は、「1年を通じて子どもたちが授業を受けられるようになった」とこの水面に浮かぶ学校について語る。

 SSSは現在、チャランビール地区で20校以上の「水に浮かぶ学校」を運営している。バングラデシュは、ベンガル湾(Bay of Bengal)の奥に世界最大のデルタ地帯が広がっており、他の慈善団体も、この水に浮かぶ学校のアイデアをまねて他地域で活動を展開している。

 小型の船には机や図書館、黒板などが、2階建ての船には、さらに滑り台やうんてい、ブランコなどの遊具も備え付けられている。子どもたちはここで、ノート型パソコンの使い方も学んでいる。電気は、船の上部に設置された太陽光パネルで発電しているという。

 学校が終わり夜になると、今度は大人たちが、異常気象での農業技術について学びに船にやって来る。

 農民たちは、水に浮かぶ苗代で洪水の被害に耐える作物の育て方を教わる。急激な増水によりその年の収穫を失う可能性がある地域の人々にとって、このような技術は命綱となる、とレズワン氏は語る。