【11月12日 AFP】親を失ったカンガルー、太陽の光で目が見えなくなったワラビー、ユーカリを求めてさまようコアラ──ここ数年続いている深刻な干ばつで、オーストラリアの野生動物が厳しい状況に置かれている。

 オーストラリアの一部地域では、「ビッグ・ドライ」と呼ばれる異常な干ばつが数年にわたって続いており、東部の緑豊かな一部地域でも、その色が緑から茶色に変化している。

 ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)の生態学者リチャード・キングスフォード(Richard Kingsford)氏はAFPの取材に、「国内のいたるところでカンガルーが死んでいる」と述べ、現在起きている環境の変化は「あまりにもそのペースが速すぎるため、多くの動植物が適応できないでいる」と指摘した。

 ニューサウスウェールズ州の野生動物保護団体「ワイヤーズ(WIRES)」のレイチェル・ウォーカー(Racheal Walker)氏は、同州中西部では、治療のため運ばれてくる若いカンガルーが増えていると話す。

 中には、母親から見捨てられて栄養状態が著しく悪い赤ちゃんや、食べ物や水を求めて人里近くに来た親が自動車にはねられ「孤児」となる若い個体もいるという。

「食べ物を求めて放牧地に入り込み視力を失ったワラビーも少なくない。ワラビーの目は(影の無い場所で)強い日の光に耐えるようにはできていない」と、ウォーカー氏は言う。

 干ばつのためにユーカリの木が枯れてしまい、その葉を食べるコアラは広い範囲の移動を余儀なくされている。しかし、こうした移動には、犬に襲われたり、自動車にはねられたりするリスクが常にあるという。

 その他、繁殖期に道路に出てきて自動車にひかれるハリモグラの数も増えている。ハリモグラはとげのあるアリクイとも呼ばれている。

 ワイヤーズによって保護されたカンガルーとウォンバットの数は、2016年から2018年の間にそれぞれ52%と81%増加した。ウォーカー氏は、人が入って行かない奥地では、助けを必要とする動物の数がさらに増えると指摘している。