■「詳細を伝える窓」

 オーバート氏と研究チームはウラン系列年代測定法を用いて、長い年月の間に壁画の上部に形成された方解石の層と、下部にある物質の両方を分析した。

 壁画から1平方センチ未満のサンプルを採取して分析した結果、1頭の動物の壁画が少なくとも4万年前に描かれたものであることが明らかになった。5万2000年近く前までさかのぼる可能性も残されているという。

 スペインやイタリア、フランスでは有名な洞窟壁画が多数発見され、年代測定も行われてきた。しかし、インドネシアの描画は、洞窟壁画が欧州から出現したとの考えに異を唱えるものだ。

 今回調査した壁画の2番目の層の推定年代は約2万年前だった。これはこの時代の描画に興味深い進化が起きたことを示唆している。オーバート氏は、「約2万年前、描画の対象は動物世界ではなく、人間世界となる。ほぼ同時期の欧州でも同じことが確認される」とAFPの取材に語った。

 今後は、インドネシア国内にある他の壁画とともにオーストラリアにある壁画についてもさらなる調査を実施する予定だという同氏。壁画を調査する際には過去との密接なつながりを感じると話し、「壁画を目の当たりにするのは素晴らしいことだ。それは過去に向けて開かれた詳細を伝える窓だから」と続けた。(c)AFP/Sara HUSSEIN