■トラが増えれば、観光客も増える

 1900年には、地球上には推計10万頭を超えるトラがいた。しかし2010年になると、その数は全世界で3200頭にまで落ち込んだ。

 ネパールのジャングルは約100年前、国を支配していた王族や、この国に進出してきた英国の要人たちの狩猟場と化した。彼らの狙いは、ベンガルトラだった。さらに近年では、2006年まで10年にわたって続いた内戦によって南部では密猟が横行し、ネパールのトラは絶滅寸前に追い込まれた。

 政府が方針を転換したのは2009年だった。地域ごとにトラを保護するためのグループを募集し、多数のボランティアの若者たちが国立公園のパトロール活動や啓蒙(けいもう)、トラの生息地の保護活動に参加し始めた。

「トラは私たちの財産。保護しなくてはならない」と述べるのは、サンジュ・パリヤー(Sanju Pariyar)さん(22)だ。10代で密猟監視グループに加わったというパリヤーさんは、「トラやサイの数が増えれば、観光客が増え、自分たちのためにもなることをみんな分かっている」と話す。

 密猟されたトラの主な行き先は、希少な体の部位を伝統薬として珍重する中国だ。密猟者に対するネパールの罰則は厳しく、15年以下の禁錮刑と高額の罰金が科される。

 2010年にネパールは、トラの生息数を2022年までに倍増させる目標を掲げ、トラが生息する他の12か国と協定を結んだ。最初に目標を達成するのは、どうやらネパールになりそうだ。

 世界自然保護基金(WWF)のネパール支部長、ガーナ・グルン(Ghana Gurung)氏は、「ネパールのように小さく、課題のたくさんある後発発展途上国が達成できるのだから、他の国も同じようにできるはずだ」と語った。(c)AFP/Paavan MATHEMA