【11月6日 AFP】インド西部マハラシュトラ(Maharashtra)州で射殺された雌の「人食いトラ」をめぐり、同国の閣僚が同じ政党に所属する政治家を、「身の毛のよだつ」トラ殺しを命じたとして非難し、法的手段に訴える構えをみせている。

 これまで10人超を殺害してきたとされるトラは、ここ数十年では同国で最大級の注目を集めた数か月にわたる捜索の末、2日夜にマハラシュトラ州の森林で射殺された。

 だがトラの射殺をめぐって直ちに論争が起き、非倫理的で違法なものだったとの声も上がっている。

 同国のナレンドラ・モディ(Narendra Modi)政権の閣僚で、筋金入りの動物保護活動家であるマネカ・ガンジー(Maneka Gandhi)女性・児童育成相は、マハラシュトラ州の森林相がトラを殺すため「銃を撃ちたがる狙撃手」を雇ったと非難。

 与党・人民党(BJP)に所属するガンジー氏は、「まさに犯罪事件以外の何物でもない」と述べ、トラへの発砲を「身の毛のよだつ殺し」と表現。

 ガンジー氏はツイッター(Twitter)に、「動物への共感が完全に欠落した今回の件を、テストケースとして間違いなく取り上げるつもりだ。政治的にも、法的・刑法上でも」と投稿し、同じくBJPに所属するマハラシュトラ州森林相を、捕獲延期を求める申し立てを無視したと非難した。

 同国最高裁は9月にこのトラの捕獲命令を発したが、殺処分は鎮静剤の投与が失敗した場合に限るとした。この命令に対しては複数の異議申し立てがあった。

 ハンターたちの間で「T1」と呼ばれていたトラは、2016年以降に13人を殺害したとみられている。一方で動物保護活動家らは、生後10か月の赤ちゃんトラ2匹の母親でもあったT1は、子どもを守ろうとしていたのだと主張した。

 T1の捜索は150人を超える捕獲隊が数か月にわたって展開。パラグライダーや赤外線カメラなどを駆使した他、ゾウの背にまたがった狙撃手らも投入された。(c)AFP