【11月1日 AFP】初期の子宮頸(けい)がんの子宮全摘出術で用いられることの多い低侵襲のロボット支援下内視鏡手術が、実は患者の死亡リスクを増大させているとする研究論文2本が10月31日、医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に発表された。

 これらの研究論文は、十分な結果検証がなされる前に、子宮頸がん患者の女性たちに人気の高い選択肢となったロボット手術に警鐘を鳴らしている。

 1本目の研究論文の主執筆者の一人で、米ノースウエスタン大学(Northwestern University)フェインバーグ医学部(Feinberg School of Medicine)のショーレ・シャハビ(Shohreh Shahabi)教授(婦人科腫瘍学)は「現時点では、子宮頸がんの広汎(こうはん)子宮全摘出術は、開腹手術のみで行うことを推奨する」と述べた。

 シャハビ氏の研究では、二つの手術方法を比較するために無作為化臨床試験を実施。4.5年後の無病生存率を比較したところ、ロボット支援下内視鏡手術を受けた患者では86%だったのに対し、開腹手術では96.5%で約10%の差があった。

 さらに3年後の全生存率で比較した場合でも、ロボット支援下内視鏡手術が93%だったのに対し、開腹手術は99%だった。

 もう一つの研究は、全米がんデータベース(National Cancer Database)を利用し、2010~2013年に初期の子宮頸がんで広汎子宮全摘術を受けた患者2461人を分析した。ロボット支援下内視鏡手術と開腹手術の割合は半々だった。

 こちらの研究でも、がん再発率と死亡率で、ロボット支援下内視鏡手術が開腹手術を上回っていた。死亡率は、ロボット支援下内視鏡手術が9.1%だったのに対し、開腹手術は5.3%だった。しかしこの研究では、こうした差異が生じる理由は説明されていない。

 シャハビ氏によると、ロボット支援下内視鏡手術ではがん細胞が完全に除去できていない可能性や、使用される器具が何らかの形でがん細胞の転移を促している可能性があるという。(c)AFP/Kerry SHERIDAN