【10月31日 AFP】「関税前セール」やってます──。米中が互いに関税を掛け合う貿易戦争の影が米経済に忍び寄る中、米国内の小売店ではカーペットから家具、自転車まで、さまざまな商品を客に売り込むのに、そんな宣伝文句が登場している。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は中国による知的財産権侵害を理由に、数千に上る中国製品に追加関税を賦課。そのあおりを受けることになった多くの米企業は、関税発動前に原材料や製品を駆け込みで輸入し、現在は在庫が過剰な状態になっている。

 こうした中、2016年の大統領選でトランプ氏が制し、当選につながった中西部ミシガン州のグランドラピッズ(Grand Rapids)にある家具小売り「フローリング・アメリカ(Flooring America)」の店舗では、「関税前セール!」と銘打ったバーゲンのチラシを配った。

 その中では「大量に買い付けて、お客様に還元しています!」ともアピールしている。

 米国で9月末に発効した10%の対中関税の対象品目には、中国製のカーペットや床材、家具、マットレスなども含まれる。税率は来年1月1日に、25%に引き上げられる予定だ。

 フローリング・アメリカの従業員はAFPの取材に、関税発動前に仕入れた商品について10%の値引きセールを行っていることを認めた。もっとも、大半の顧客の反応はイマイチだという。

 一方、北東部ニューイングランド(New England)地方にある家具チェーン店は、関税の影響で来年初めに値上げすることになるとテレビCMで予告。それに先立って商品を購入するよう消費者に促している。

 米大リーグ、ボストン・レッドソックス(Boston Red Sox)の「公式家具店」をうたうジョーダンズ・ファーニチャー(Jordan's Furniture)のエリオット・タテルマン(Eliot Tatelman)最高経営責任者(CEO)は、関税が良いか悪いかについて特定の立場は取らないと断った上で「関税が課されると、さらにコストがかかることになる。だったら今買えばいいってことさ」と地元メディアに語っている。

 ただ、同店による関税前セールの広告に対しては、ツイッター(Twitter)で「政治を利用して短期間に売り上げを増やそうとしているだけじゃないのか」などと批判的な声も上がっている。

 サンフランシスコ在住のツイッターユーザーの情報によると、複数の家具店が25%の値引きを実施しているという。

 このほか自転車の通販サイト「ウィグル(Wiggle)」も、800ドル(約9万円)以下の商品の注文には関税分を販売価格に転嫁しないと宣伝している。(c)AFP