■被害者が責められる社会

 経済協力開発機構(OECD)の男女賃金格差および管理職に占める女性の割合調査で、韓国は常に最下位レベルに位置している。

 韓国女性の多くが職場でのセクハラを経験しているが、被害を受けた女性が声を上げると、「騒ぎを起こした」として厳しく非難され、社会的に葬られたり、解雇されたりすることも珍しくない。

 徐さんの一件は、エリートである検察官も例外ではないことを示している。

 徐さんは2004年に検察庁で働き始めて以来、日常的に男性の上司や同僚から、言葉や身体的な接触によるハラスメントを受けたと言う。葬式でセクハラを受けた後、上司に相談すると、セクハラの加害者である安兌根(アン・テグン、Ahn Tae-geun)氏に個人的に謝罪させると約束してくれた。だが、謝罪はなかった。代わりに徐さんは懲戒処分を受け、地方の小さな町での役職に降格された。

 その背後にいるのは安氏だと、徐さんは疑った。組織内で正式に被害を申し立てたが、検察庁を混乱させたとして叱責されただけだった。ヒエラルキー組織では、その組織への忠誠心が最も高く評価されるのだ。

 韓国の検察官のうち30%が女性だが、うち上級職に就いている女性は8%にすぎない。政府が今年実施した調査では、女性検察官の70%がセクハラまたは性的虐待を経験していると答えた。だが、被害に遭った女性検察官の多くは、キャリアが損なわれるのを恐れ、沈黙を守っている。

 韓国女性労働者会(Korea Women Workers' Association)が実施したさらに広範な調査によると、職場でのセクハラ被害を訴えた女性の65%近くが、キャリアが損なわれたと回答している。

 結婚して、子どもが1人いる徐さんは、事態を公にする勇気をかき集めるのに、8年かかった。

「多くの女性が私の行動から勇気を得たと感謝してくれた。女性たちは、私のことを知り、性的虐待を受けても声を上げられないのは自分のせいではなく、社会のせいだと気付いた」と徐さんは言う。