【10月15日 AFP】地中海の島国マルタで、首相の汚職疑惑を追及していた著名ジャーナリスト、ダフネ・カルアナガリチア(Daphne Caruana Galizia)氏が車に仕掛けられた爆弾で殺害されてから1年になる。殺害を指示した人物らはいまだ自由なままである一方、同氏の遺業を引き継いだ人々には裏切り者の烙印が押されている。

 3人の子を持つ女性記者だったカルアナガリチア氏の乗った車が爆破されたのは、昨年10月16日。燃え尽きた車が残っていた吹きさらしの空き地は今、同氏の人生をたたえる記念碑的存在となっている。

 同氏の死後、ジャーナリストの国際連合体が「ダフネ・プロジェクト(Daphne Project)」を発足。運営は、殺害または投獄されたジャーナリストの仕事の継承を使命とする、仏パリに本部を置く団体「フォービドゥン・ストリーズ(Forbidden Stories)」が行っている。

 言論の自由に賛同し、カルアナガリチア氏の殺害現場を訪れていたタニア・アタード(Tania Attard)さんは「彼女を排除すればせいせいすると彼らは考えたのかもしれないが、それで片が付いたとは全く思わない。彼らにとってはかえって裏目に出たと思う」と語った。

 だが、国外のジャーナリストたちは彼女の仕事を継承することができても、正義を訴えるマルタ島のジャーナリストたちは、裏切り者扱いされていると話す。

 カルアナガリチア氏は生前ブログ上で、人口50万人に満たないマルタの不祥事の暴露に取り組んでいた。こうしたスキャンダルには石油の密輸や資金洗浄から、タックスヘイブンのオフショア口座、縁者びいきまであり、政府関係者や組織犯罪の関与を示唆していた。またマルタ島の政治家に対する強烈な個人攻撃も立ち上げていた。

■政府を牛耳る私利私欲の人々

 マヌエル・デリア(Manuel Delia)氏はジャーナリストやブロガーとしての活動が原因で、街中で脅しや侮辱の言葉を浴びせられることがあると話す。カルアナガリチア氏が行っていたのと同様、外国人ジャーナリストに話すことも彼の仕事の一環だ。

「時間がたつにつれて、ここでは民主主義がちっともきちんと機能していないことに、われわれはさらに気付くようになった。法の支配が行き渡っていない」とデリア氏。

 彼は2013年に労働党に敗北するまで、当時与党だった国民党のために数年間働いていた。「さまざまな機関は完全に政府に組み込まれ、支配されている。そしてその政府を支配しているのは、自らの権力と個人的利益の追求を動機とする人々だ」