【10月10日 AFP】オーストラリアのシドニーで9日、帆船を思わせる形をした世界的に有名なシドニー・オペラハウス(Sydney Opera House)に競馬「エベレスト杯(The TAB Everest)」の広告が投影された。歴史的建造物であるオペラハウスをギャンブルの広告に利用することへの反発から激しい論争が起きていた。

 今年のエベレスト杯は13日に開催される。賞金総額は芝レースとしては世界最高の1300万オーストラリアドル(約10億円)。

 国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)にも登録されているオペラハウスへの競馬広告投影をめぐっては、さまざまな政治的立場の政治家も巻き込んだ激しい国民的論争が起きていた。

 論争の中で、競馬の主催者側はオペラハウスに広告を投影することを繰り返し主張。シドニー・オペラハウスは五輪など大きなスポーツ大会の広告が投影されたことはあったが、オペラハウスの運営側は「エベレスト杯」の広告については世界遺産登録が危うくなりかねないとして反対の立場を取っていた。

 しかしニューサウスウェールズ(New South Wales)州政府が介入し、エベレスト杯が地元の観光業界に与える恩恵は大きいとして、オペラハウス側にレースのトロフィーや色や数字を織り込んだ広告の投影を受け入れさせた。

 ニューサウスウェールズ州議会の著名議員アレックス・グリニッジ(Alex Greenwich)氏は、広告投影開始に先立ち報道陣に対し、「シドニーはラスベガスではない。われわれの文化的象徴が、問題の多いギャンブルから利益を得ている競馬業界の広告に使われるべきではない」と語った。

 一方、スコット・モリソン(Scott Morrison)首相は、「(エベレスト杯は)年間を通じて最大級のイベントだ。どうしてシドニー最大の広告掲示板に載せてはいけないのか」、「頭を悩ませるほどの問題ではない」と述べた。

 9日夜までにエベレスト杯の広告投影に反対する署名が30万近く集まった。また自分たちで光を出して投影を妨害しようと懐中電灯や携帯電話を手にオペラハウス前に集まった数百人の人たちが、「(オペラハウスは)売り物ではない」などとシュプレヒコールを上げた。(c)AFP