【10月6日 AFP】ロシアの刑務所に収監されているウクライナ人映画監督オレフ・センツォフ(Oleg Sentsov)氏(42)が5日、今年5月から145日間にわたって続けてきたハンガーストライキをやめると明らかにした。強制摂食させられることを避けるためだという。

 ロシア政府を強硬に批判してきたセンツォフ氏は、ロシアによる2014年のクリミア(Crimea)半島併合の後に逮捕され、自身の出身地でもあるクリミアで放火に関わったとしてテロと武器の違法取引の罪で有罪となり、ロシア北部の刑務所で禁錮20年の刑に服している。 

 センツォフ氏はロシア政府に対し、ウクライナ人政治囚全員の釈放を求めてハンガーストライキを始めたが、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、同氏の訴えも、同氏の釈放も拒否。これまでに先進7か国(G7)の大使や米ハリウッド(Hollywood)、ロシア映画界の著名人らがセンツォフ氏の釈放を求めている。

 センツォフ氏の手書きのメモのコピーがメディアに公開され、これには「私は明日からハンガーストライキをやめることを余儀なくされた。2018年10月6日からだ」と書かれている。

 センツォフ氏は、「私の健康が危機的状態にあり、内臓に病的変化の兆候があるため」ロシア当局が強制摂食を計画していると述べ、「私の意見は考慮されていない」と続けた。さらに、ハンストは145日間に及び、体重が20キロ落ちたことを明らかにするとともに、ウクライナ人の政治犯を釈放できなかったことへの謝罪の言葉をつづっている。

 多くの活動家や旧ソ連時代の反体制派は、ロシアの刑務所で行われる強制摂食を拷問になぞらえ、予測不可能な事態を招くと指摘している。

 ロシア連邦刑執行庁のバレリー・マクシメンコ(Valery Maksimenko)副長官は、センツォフ氏は現在、医療刑務所に収容されており、回復し次第、元の刑務所に移送されることになっていると述べた。

 マクシメンコ氏はロシア独立系民間テレビ局ドシチ(Dozhd)の番組で、「彼は若いし、これから映画監督として有名になるかもしれない」「彼を生かさないと」と述べた。今のところセンツォフ氏は、「宇宙飛行士のように管でペースト状の食べ物を口にしている」と説明。また「生きなければならない、人生は続いていくものだ」とセンツォフ氏を説得した医師団と弁護団に感謝していると語った。

 センツォフ氏の代表作『ゲーマー(Gamer)』は、2012年のロッテルダム国際映画祭(IFFR)で高い評価を受けた。(c)AFP/Anna SMOLCHENKO