■いざという時のための保険

 身元が割れたパク氏は情報機関から解雇された。

 韓国の保守系が与党に返り咲き、情報機関のトップが入れ替わった。そしてパク氏は2010年、ソウルで逮捕された。法廷では、北朝鮮の信用を得る目的で重要度の低い情報を提供しただけと主張したが、北に機密情報を漏らしたことを問題視され有罪判決を言い渡された。

「6年間、独房にいた」とパク氏は話す。そして、自身の収容については、政治的意図によるものだと主張する。

 韓国の国家情報院は、パク氏の主張についてコメントを拒否している。

 映画評論家のリ・ヨンチョル(Lee Yong-cheol)氏は、韓国の映画雑誌「Cine21」で、パク氏のストーリーは、南北朝鮮間の「疑われてはきたものの、これまでアクセスすることのできなかった真実」のほんの一部を描くものだと指摘する。

 今後、地政学的な風向きが再び変わってその立場が危うくなった時、パク氏には保険がある。故金氏や故張氏などの当局者らと面会した時の音声記録だ。

 パク氏によると、これら音声記録は、2010年に逮捕された時には手元になかったが、現在は「国外」でしっかりと保管されているという。(c)AFP/Park Chan-kyong