■サンショウウオを使ったシロップとスープ

 この教会でこのサンショウウオの調理を始めたのは、100年以上前。貧血や肺の感染症に効果があると評判だったサンショウウオのシロップを作り始めたのだ。先住民プレペチャの知恵だろう。プレペチャの民は、このサンショウウオは羽の生えたヘビの神ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)の双子の兄弟だとしてあがめ、昔からスープにしてきた。

 修道女たちが作るサンショウウオのシロップはよく売れ、教会の主な収入源となった。そして未処理の汚水や侵略的外来種のコイ、湖の資源の乱用などのせいでサンショウウオの数が少なくなったとき、修道女たちは教会の存続も危機にさらされていることに気付いた。

 それからは、訓練を受けた生物学者でもある司祭を招き、このサンショウウオに関するあらゆることを習った。現在、飼育しているのは約300匹。2部屋分の水槽ではこれが限度だ。

 しかし、1瓶200ペソ(約1100円)で売っているシロップを作り続けるには十分過ぎる。よって、研究のため大学などにも提供しているが、時に修道女たち自身の献立となることもある。「素晴らしいスープが取れます」とモラレスさんは言う。

 メキシコ生物多様性国家委員会で絶滅危惧種の保護のために働いているマリア・エステル・キンテロ(Maria Esther Quintero)氏がAFPに語ったところによると、サンショウウオの数が激減したのは、1980年以降だ。「野生に残っている『アチョケ』は本当に、本当に少ない」

 国際自然保護連合(IUCN)は、パツクアロ湖のサンショウウオの減少は「非常に深刻だと思われ、ほぼ絶滅に近いかもしれない」と警鐘を鳴らしている。修道女たちは自分たちが育てているコロニー(個体群)によって、この減少傾向を逆転できればと願っている。(c)AFP/Jennifer GONZALEZ COVARRUBIAS in Mexico City / Juan Jose ESTRADA