■ボトックスや高血圧の薬、水泳がこだわり

 どんどん小さい作品を制作するようになるにつれ、人体の限界に直面し始めた。

「作品が小さくなるほど、自分の体の動きも抑える必要がある。完全に静止しなければならない」と、ショートさんは説明した。

 瞑想(めいそう)やさまざまな呼吸法を試してみたが、十分とは思えなかった。そこで、運動のため毎日1万メートル泳ぐことにした。また、ベータ遮断薬の服用も始めた。作業中はあめのようにたくさん摂取して、心拍数を毎分20回まで落とすと言う。「鼓動と鼓動の間、自分が完全に動かなくなったときに彫刻をする」。健常成人の安静時心拍数は毎分60~100回だ。

「視神経と目の筋肉に煩わされない」ように、3か月ごとにボトックスをまぶたに注射している。

 当然のことながら、ショートさんは制作過程を楽しんではいない。だが、完成したときの喜びはひとしおだ。

「一番うれしいのは、完成したときとギャラリーで来場者が顕微鏡をのぞき込み、圧倒されるときだ」と、ショートさんは言う。「最高の気分だ。他の誰もやっていないことをやり遂げたことを実感できる」

 映像は8月14日撮影。(c)AFP/ Joe JACKSON