【9月10日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」がイラクの都市モスル(Mosul)から駆逐されてから1年余り。サナ・イブラヒムさん(61)は、IS占拠中に家族5人を失って以来、孫22人の世話に日々追われている。一番小さい孫は、わずか2歳だ。アルツハイマー病を患う夫、モワファグ・ハミドさんの介護もしている。

 一番大変なのは、総勢32人にもなる一家に十分な食料を確保することだ。

 モスルが3年にわたってISに支配されていた間に、息子のファレスさんとガズワンさんは、義理の息子のマスードさんと共に同組織に拉致された。息子たちは治安部隊の隊員だったため、ISからは「背教者」と見なされていたという。

 たぶん殺されたのだと思う、とサナさんは話した。願いは、いつの日か息子たちの遺体を見つけることだ。

 サナさんには、戦闘の犠牲となった子どもも2人いる。息子のユセフさん(当時20)と娘のヌルさん(同18)は、長年暮らしていた旧市街にある自宅から逃げようとした際に狙撃兵に撃たれた。

■「寄付なければ飢えと病気でとっくに死んでいた」

 モスル西部の歴史のある旧市街は、戦闘で壊滅状態となった。

 一家は市内東部に転居し、毎月50万ディナール(約4万8000円)の家賃を払いながら、150平方メートルの借家にすし詰め状態で暮らしている。生き残った子ども4人は全員失業中のため、サナさんは家賃の支払いに苦心している。

「モスルの慈悲深い方たちからの寄付のおかげで私たちは暮らしているんです。彼らがいなければ、飢えと病気でとっくに死んでいたでしょう」と話す。

 AFPの取材中にも、そうした支援者の一人が衣類や食料の入った袋をいくつか届けに来た。この女性公務員は、困窮している複数世帯を支援するために自分と息子の毎月の給料の一部を寄付していると語った。

 日々慌ただしい生活を送っているサナさんだが、将来の希望について尋ねると、はっきりとこう答えた。

「(孫たちには)勉強してほしい。良い仕事を見つけて何とか暮らしていけるように」「他の多くの孤児たちがしているように、通りで物乞いをしてほしくない」

 公式の統計はないが、複数のNGOによれば、モスルには孤児が推計3000人以上いる。

 新学期を控えた孫のイマンさん(12)は、教室に戻れることを喜んでいた。

「今は中学生だけど、勉強を続けたい」「大学に行って医師になりたいです」と、祖母に見つめられながら話した。(c)AFP/Mohammad Salim