■麻薬と貧困

 このマクドナルド店舗は、マルセイユ市北部の荒廃したサンバルテルミー(Saint-Barthelemy)地区にあり、脇には一部完成している幹線道路が通っている。この地区はイスラム教徒が多い多民族地域で、同市の最貧困層が住む団地もある。

 労働組合員らによると、この地区でマクドナルドは地元スーパーに次ぐ2番目に大きな雇用主として、77人を雇い入れている。

 住民らは、店や会社が徐々にこの地区から撤退する一方で、麻薬の密売が横行し、地元の失業者たちに実入りは良いが危険な仕事の機会を与えていると嘆く。

 そうした中、マクドナルドは1992年のオープン以来、犯罪行為の阻止に一役買ってきたと、従業員や労働運動家らは話す。従業員の一人、ノルディーヌ・アクリル(Nordine Aklil)さん(27)は「マクドナルドはいわば、僕を救い出してくれた」「刑務所から出てきて、マクドナルドは要するに更生の機会をくれたんだ」と語り、「人生をもっと安定させることもできた」と続けた。

 この地区の労働者階級による共同体(コレクティブ)「SQPM」のメンバーのサリム・グラブシ(Salim Grabsi)さんも、マクドナルドが「社会的役割」を果たしてきたという意見に同意する。「実務研修を受けていない若者たちは、ここに来る」と言う。「学校に行きたくない、学校に興味を失った子どもたちが、ドラッグなどへたどり着くのを防ぐために就く最初の仕事は大抵、マクドナルドだ」