【9月6日 AFP】イスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)への処遇をめぐり、国際社会から不名誉な非難を浴びせられてきたミャンマーでは、多くの人が困惑し、傷つき、憤り、やり場のない気持ちを抱えて過ごしている。国連(UN)のみならず交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック(Facebook)からもやり玉に挙げられた。だが、仏教徒が大半を占めるこの国で、無国籍のロヒンギャの苦境に寄せられる同情の声はあまり聞かれない。

 昨年、ミャンマー軍がロヒンギャの武装勢力を取り締まるという名目で行った作戦で約70万人のロヒンギャが暴力にさらされ、世界を震撼させた。だがミャンマー国内では、軍が侵入者である「ベンガル人(ロヒンギャの蔑称)」から国を守ってくれたとして、幅広い支持を集めている。侵入者とは、ロヒンギャに不当に押し付けられた呼び名だ。

 国連調査団は先月27日、ミャンマー国軍の総司令官と高官5人をジェノサイド(大量虐殺)の容疑で、捜査および訴追するよう要求する報告書を発表。アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問についても、ロヒンギャ保護のために声を上げなかったと名指しで非難した。

 それでも国民は、反イスラム的思想と軍が捏造(ねつぞう)し広めた歴史によってゆがめられたこの問題に沈黙を守っている。

 最大都市ヤンゴンの食堂でAFPの取材に応じた船主の男性(47)は、「民主主義のためなら軍と喜んで戦ったが、ラカイン(Rakhine)州のことで戦いたくはない」と話した。「被害を受けた人たちを気の毒には思う。でも、テロから国を守ることの方が重要だ」と続け、ロヒンギャの武装勢力を根絶する目的で行われた軍による「掃討作戦」は正当性がある、という政府の説明を繰り返した。

 ミャンマーは2011年に軍政から準民主主義にかじを切り、半世紀近く無縁の存在だった自由が国民にもたらされた。だが多くの人は、ロヒンギャ問題で、国営メディアやフェイスブック、政府の方針に従った報道をする新興メディアを情報源として頼っている。愛国心やいまだ強い影響力がある軍に対する不信感から批判が控えられ、政治問題が再びタブーになりつつある兆候も見られる。